【ファインダー越しの世界】とにかく複雑な気持ちで撮影したフランクフルトの「月曜開催抗議デモ」の一戦
長谷部も負の潮流に飲まれ、イエローカードを受ける。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUAHARA
体制への抗議のはずが、ピッチに怒りが向けられ、選手は集中を欠く。ドイツで取材したなかで最低と言える酷い内容に。
試合前、フランクフルトのベンチがあるゴール裏で、スタンドからピッチへとフランクフルトサポーターが続々と下りてきた。普段ではあり得ない光景だった。彼らはゴール裏とバックスタンドのピッチを囲むと、広告看板にリーグ戦の月曜開催に抗議する横断幕を掛けていった。一方、スタンドに陣取るサポーターも抗議の垂れ幕を広げ、声高らかに不満をぶちまけた。
この抗議活動はクラブへ事前に伝えられていたのだろう。チームの広報担当からカメラマンのピッチへの入場口は、いつもとは異なりアウェー側のベンチ横からだと指示されたからだ。殺気立ったサポーターを触発しないようにという配慮だったと思われる。
フランクフルトサポーターの怒りの行動は、試合が始まっても収まらない。低音のブーイングが絶え間なく続き、後半開始前には大量の紙テープとテニスボールが投げ込まれ、試合の進行が遅れた。敵対するライプツィヒのサポーターもこの行為に毒気を抜かれたようで、どこか大人しかった。
こうした雰囲気のなかで、選手が最高のプレーを見せるのは難しい。鳴り止まらないブーイングに両チームの選手たちは明らかに集中力を欠き、ミスを連発する。戦術など忘れたかのようにボールをただ蹴り合い、苛立ちから不要のファウルが生まれ、受けた相手の選手は大袈裟なジェスチャーで試合を停滞させた。8枚ものイエローカードが出た乱戦は、これまでドイツで撮影の取材をしてきたなかで最低と言える酷い内容だった。
長谷部もまた負の潮流に飲み込まれた。
ボランチとして先発した長谷部誠も他の選手と同じく、フランクフルトサポーターが作り出した負の潮流に飲み込まれた。前半終了間際のナビ・ケイタのファウルに対して必要以上に激高し、後半早々にはラフプレーでイエローカードを受けた。適格な読みで相手の攻撃を摘み取る長谷部にしては、手荒いプレーが多く見られた。
荒っぽい局地戦によって消費されていく90分間では当然、絵になる写真を撮ることは難しかった。プレーする選手たちを無視した、間違った方向に向けられた怒りに感情が醒めてしまって試合に入り込めず、シャッターを切る回数も普段の半分ほどにとどまった。
両チームが持ち味を発揮できず、試合をぶち壊す理不尽な怒りがピッチを支配した90分間。結果はフランクフルトが逆転勝利を収めて3位へと浮上。チャンピオンズリーグ出場も現実味を帯びてきた。
しかし、勝利したフランクフルトから見ても、この試合は後味の悪さが残ったことは否定できない。果たしてリーグの体制に対する批判を試合に向けたフランクフルトサポーターの行為は正しかったのか? 勝ったとはいえフランクフルトの選手たちの表情はどこか晴れないものだった。大事な試合が続く今後に影響しなければいいのだが……。
取材・文:徳原隆元
text by Takamoto TOKUHARA