【浦和】曺貴裁監督就任で異例の声明「『厳しさ』とは、手段を問わない勝利至上主義と大きく異なる」。今月退任の田口誠社長が“最終決裁者”
浦和レッズ 写真:手塚大介/(C)Daisuke TEZUKA
堀之内SDから複数候補者のプレゼンを受けて、社内規定に基づき、社長が最終的に承認
J1リーグの浦和レッズは6月16日、過去にパワーハラスメントを巡り、日本サッカー協会(JFA)とJリーグから資格停止などの処分を受けた曺貴裁監督の就任にあたり、田口誠代表取締役社長が異例の長文メッセージを発表した。
前・京都サンガF.C.の曺監督の招聘を巡っては、一部報道が先行した段階からファン・サポーターの間で賛否両論が巻き起こった。そうした状況を受けて田口社長は、6月30日で退任する立場ながら、自らが「最終決裁者」として説明責任を果たす必要があるとして、監督選定の経緯や考え方を詳細に説明した。
堀之内聖スポーツダイレクター(SD)による複数候補のプレゼンを経て、社内決裁規定に基づいて、田口社長が最終的に承認したという。
メッセージのなかで最も多くの言葉が割かれたのが、曺監督が過去に起こしたパワーハラスメント事案への向き合い方だった。
田口社長は、曺監督が湘南ベルマーレで指揮を執っていた際、選手やスタッフに対するパワーハラスメント行為が認定され、JリーグとJFAから処分を受けた事実について、「軽視することはできなかった」と明言した。
そのうえで、同社長がトップチームに求めていた「厳しさ」とはまったく異なるものであると、次のように説明している。
「浦和レッズがチームや選手、スタッフに求める『厳しさ』とは、言わずもがな、社会倫理に反した形で強要するものでも、されるものでもありません。また、クラブ理念やスポーツマンシップに反する思想に基づいた、手段を問わない勝利至上主義とも大きく異なります」
そして、競技力向上を理由にしたとしてもハラスメント行為を認める余地はないと断言した。
さらに田口社長は、「スポーツの指導現場において不要であり、排除されるべき行為」と位置付け、「たとえ競技力の向上を目的としていたとしても、そうした行為を許容する余地は微塵もございません」と強い表現で否定している。
一方、曺監督が謝罪と反省を経て約5年半にわたりプロクラブで指導を続けてきた事実にも触れた。ただし、それだけで再発しない保証になるわけでもなく、クラブとして防止体制を機能させ続けるとしている。
具体策として、浦和は2024シーズン終了後にトップチーム内に「チーム管理担当」を新設したと明かす。競技部門から一定の独立性を持ち、クラブとチームの橋渡し役を担う組織で、トップチームが「聖域」や「ブラックボックス」にならないよう監視・支援する役割を担っている。
またクラブとして、ハラスメント防止に向けて「指導・研修」「牽制」「緊密連携」などの予防策に加え、「監視」「ヘルプライン」「レポートライン」による早期発見体制を整備。万一発生した場合には、「是正体制」や外部機関との連携を含めて対応すると説明した。
田口社長は「曺貴裁氏とはこれらについて合意している」と明かし、定期的なクラブ・チーム間の連絡会議にも参加してもらう方針を示した。
そして最後に、「私ども浦和レッズは、いかなる場面においてもハラスメント行為は不要であると考えており、そうした行為を許容することは決してありません」と宣言。仮に問題が発生した場合、被害者保護を最優先に迅速な対応を取ると約束した。
曺監督の招聘を巡っては、サッカー面での実績と過去の問題をどう評価するかが大きな論点となってきた。今回の長文メッセージでは、その是非よりも、「再発を許さない仕組みをクラブとしてどう構築し、どう監督(マネジメント)していくのか」に重点が置かれた。
クラブOBでは、ギド・ブッフバルト氏以来の監督就任である。とはいえ、退任を目前に控えた田口社長が最終決定者となる監督人事とあって、ピッチ上の結果以外の面でも波紋は広がり議論が続きそうだ。
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