宇佐美貴史の心に刻まれる恩人ペーター・ヘアマンの言葉
恩師の言葉を胸に、宇佐美は突き抜けられるか? 写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
バイエルンに初挑戦したときのコーチ。ストレートな物言いが、宇佐美には新鮮だった。
2017―18シーズン前半戦の宇佐美貴史は、ブンデスリーガ2部首位を行くフォルテュナ・デュッセルドルフで12試合・2ゴールの結果を残した。加入1年目でレギュラーポジションを取り切れずにいるものの、少しずつ出場機会を増やしている。
試合ではセットプレーのキッカーを任されるなど、高い技術とキックの精度がフリートヘルム・フンケル監督から評価されている。後半戦は、チームの来季1部昇格に向けて、主力を突き上げ、レギュラーの座を奪い取るような仕事が期待される。
宇佐美にとってデュッセルドルフで訪れたひとつの転機が、ドュッセルドルフのペーター・ヘアマン前コーチのバイエルン・ミュンヘンへの「移籍」だった。リーグ6連覇を目指すドイツ王者が10月、チームのてこ入れを図るためユップ・ハインケス新監督を招聘。その名将の元同僚でもあったヘアマン氏がコーチとしてヘッドハントされた。
宇佐美がデュッセルドルフ移籍を決めたひとつの理由が、ヘアマンの存在だった。2011年、ガンバ大阪からバイエルンへ移籍したドイツ初挑戦の際、チームを率いていたのがハインケスであり、若手を指導していたのがヘアマンだった。そして宇佐美は当時ヘアマンから才能を高く評価されていた。
「ヘアマンは変わったヤツで(笑)。選手たちにとって面と向かって言われたら嫌だなって思うことを平気でズバズバ言ってくる。それが敢えてなのか、あまり考えていなかったのか分からないけれど。とにかく要求に応えろと、それに応えるとポジティブな言葉をかけてくれる」
その竹を割ったような性格を、宇佐美は気に入った。「練習から最高のクオリティを出すのはもちろん、戦うところとシンプルに走る距離でも一番でなければいけない。技術の高い選手はそういうところで頑張らないと評価されない」など、確かにその通りだと思うことを言ってくれる、日本にはいないタイプの指導者だった。ただ、ガムシャラに取り組むことが、決して「正解」とも言えないこともあった。
「ドイツに来た当初は、そう言われすぎて、なかなかコンディションも上がってこなくて苦労しました。日本人選手はそう言われて、無理に上げて崩してしまうことがある。久々にそういう厳しいことを言われて、何日間かかなり戸惑いましたけれどね(笑)」
そういった出会いを含め、宇佐美には新鮮だった。そういう本音で向き合ってくれたコーチからも「ベンチにくすぶっているような選手じゃないだろ」と背中を押され、デュッセルドルフ行きを決断した。