【浦和】鈴木啓太と阿部勇樹の言葉を胸に、ボランチ柴戸海の挑戦が始まる
ハードワークが身上の柴戸海、堀孝史監督のスタイルにもフィットしそうだ。(C)SAKANOWA
明治大アドバイザーの鈴木啓太から「カテゴリーは関係ない。常に考えてプレーすることが大切」とアドバイスされる。
2017年5月5日、明治大4年の柴戸海は浦和レッズへの加入を早々に発表する。複数クラブが獲得に動くなか、「高いレベルで揉まれて成長したかった。迷いはなかった」と進路を決め、残る大学でのサッカー生活に集中した。
その月の15日には、浦和と明治大の練習試合が大原サッカー場で行なわれた。ボランチを主戦場とする柴戸だが、この日は明治大のセンターバックとしてフル出場。前日に浦和はリーグの新潟戦を戦っており、サブ組が主体となって臨んでいた。とはいえ、ズラタン、梅崎司、長澤和輝、矢島慎也ら実力派揃い。その相手に柴戸は堂々としたプレーを見せ、1-1のドローに持ち込んでみせた。
試合後、柴戸に嬉しい二つの出来事があった。まず当時のペトロヴィッチ監督にあいさつに行くと、「いい選手だ!」と笑って褒められた。そして、練習試合には出ていなかった阿部勇樹だが、「どの選手が柴戸? 何番の選手」と観戦しながらチェックしてくれていたというのだ。
阿部勇樹は、柴戸がずっと憧れてきた存在だ。
「僕のことを気にかけてくれているというだけで嬉しかったです。練習参加したときにも声を掛けてくれました」
そう語って柴戸は目を輝かせた。
若い頃からジェフ千葉(当時・市原)でキャプテンを務め、FIFAワールドカップ・南アフリカ大会で日本をベスト16に導き、イングランドのレスターへの移籍も経験。そして浦和で二度のアジア王者に輝いた。「たくさんのことを学んで、いつか追いつき、追い越せるようになりたい」と、胸を弾ませる。
柴戸と阿部。ボランチと最終ラインを担える守備のスペシャリストという点で共通する。柴戸の武器は「守備の部分での豊富な運動量。デュエルも負けない。攻撃面では前線へのパスであり、ポゼッションの部分では高校、大学と意識して取り組んできて自信はあります」と言う。確かに、阿部から学べることは多そうだ。
さらに明治大のアドバイザーを昨年から務めて練習の指導にも当たっていた元浦和の鈴木啓太氏からは、「カテゴリーは関係ない。常に考えながらプレーすることが大切」とアドバイスを受けたそうだ。浦和が誇る二人のボランチから、すでに多大な影響を受けてきた。
「起用されるならば後ろのほうになると思うので、槙野智章選手、遠藤航選手の守備の部分や前線へのボールの共有の仕方を盗んで、自分のものにしていきたいです」
そう決意を語る柴戸にとって、申し分のない環境が浦和にはある。
とはいえ、学ぶ、成長する、という姿勢は大切だが、22歳であれば、槙野も遠藤も、そして阿部も鈴木もチームの中心になっていた年齢だ。「感動や勇気を与えられる選手になりたい」という大きな目標を叶えるためにも、まず、浦和のアタッカー陣を抑えて、少しずつインパクトを残していきたい。そのハードワークや1対1の強さが、堀孝史監督に必要とされる日は――そう遠くはないかもしれない。
取材・文:塚越 始
text by Hajime TSUKAKOSHI