ブンデスリーガCEOは選手の給与制限を本格検討「最も目立つ批判はスポーツとビジネスの境目に」
フランクフルトの長谷部誠。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
現在のEU法では禁止。かつてはバイエルン元会長も提案。
日本人選手6人が在籍するドイツ・ブンデスリーガのクリスティアン・ザイフェルトCEOが4月28日、ドイツ紙『フランクフルター・アルゲマイネ』のインタビューに応じて、「選手の給与制限を可能にしなければいけない」と、「サラリーキャップ制」を含め、移籍金などを介することで高騰してきた給与の体系を見直すタイミングであると語った。サッカーの専門誌『キッカー』でもこの発言が大々的に取り上げられ、「プロサッカーが社会といかに共存していくか」について議論を深めている。ただ既存のEU法ではサラリーキャップ制は禁じられるなど、実現に向けては課題も多い。
ザイフェルトCEOは「最も目立つ批判の一つが、スポーツとビジネスの境界のところにあります」と指摘。サッカーバブルが高騰を続けて歯止めが効かずにいたなか、今回、コロナショックが起きた。そうしたなか、「”世間知らず”とさえ揶揄されてきた」サッカー界の構造を見直すべきタイミングではないかと提唱している。
ザイフェルトCEOは次のように課題を挙げる。
「こうして近年、成功を収めてきたシステムについて議論することは容易ではありません。ただ、ネットからダウンロードできる契約書を介し、移籍金やコンサルタントに大きな額の金銭が動きます。しかし一般的な23歳を知っている身からすれば、それゆえ思うこともあります。日常生活に密着したソリューション(問題の解決方法)を見出すことが大切です」
もちろんプロフェッショナルとして、厳しい競争の中で金銭面の評価を受けるべきである。しかし、果たしてそれが社会的に見て「正常」であったのか。今一度考える機会ではないか。同CEOは「客観的な基準から、おかしいのではないかと思ってきた点について、少なくとも制限を設けたり、改善したりすべきです」と指摘している。
バイエルン・ミュンヘンのカール・ハインツ・ルンメニゲ社長も以前から選手の給与制限をすべきだという意見を持ち、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)のミッシェル・プラティニ前会長とその点について話し合いをしていたという。
しかし、給与制限は現在のEU法では禁止されている。そこでザイフェルトCEOは、一部のヨーロッパの国々で採用されているコンサルト料の制限を、「政治的に」明文化すべきだと提案している。
一方、こうした言動に対し、すでにドイツのコンサルタント業界からは反発が起きている。同CEOは「脅迫され訴訟を起こすと言われています」とも明かしている。
長年に渡り日本人選手が数多く活躍してきたリーグでもあり、興味深いテーマだ。もちろん、背景には他国との駆け引きもあると言える。ただ同CEOは「社会のためにあるべきプロサッカー像を考えるべき」と一貫して主張している。ドイツ独自になるのか、あるいはヨーロッパ全体を巻き込んだ動きになっていくのか。ドイツ発でどのようなルールが作られていくのか見守っていきたい。
今季のブンデスリーガには現在、1部に大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)、長谷部誠と鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)、2部に遠藤航(VfBシュトゥットガルト)、原口元気(ハノーファー96)、宮市亮(FCザンクト・パウリ)が在籍している。
[文:サカノワ編集グループ]