【川崎】10か月ぶり復帰即ゴール中村憲剛「この日のため全て捧げてやってきた」「等々力には神様がいるのかな」
ケガからの10か月ぶりの復活を遂げ、記者会見に応じた川崎の中村憲剛。協力:川崎フロンターレ
清水戦で途中出場、ループを沈める。チームも5発大勝。
[J1 13節] 川崎 5-0 清水/2020年8月29日/等々力陸上競技場
負傷によりリハビリに努めてきた川崎フロンターレのMF中村憲剛が、8月29日のJ1リーグ13節の清水エスパルス戦で約10か月ぶり、301日ぶりにメンバー入りすると77分から途中出場。85分にループシュートを決めて、復帰即ゴールを決めてみせた。
中村は昨年ルヴァンカップ優勝を果たしたあと、11月2日のJ1リーグ30節のサンフレッチェ広島戦で負傷。左ヒザ前十字靭帯損傷と左ヒザ外側半月板損傷の手術を22日に受け、そこから全治約7か月と診断されていた。
その後、リハビリを続けてきた。3月に再びヒザの状態が悪化したこともあったという。しかしそういった危機も乗り越え、この新型コロナウイルスの中断期間には、自身の状況から何かを伝えられればと、パス練習の様子をSNSで発信。さまざまな反響があった。
この日、プロ18年目になるミッドフィルダーは今季初めてベンチ入り。すると3-0で迎えた77分、2ゴールを決めていた旗手怜央、1得点のレアンドロ・ダミアンと代わって、中村と小林悠が投入される。70分にはゴール前のコンビネーションから、背番号14がさっそくシュートを放つ。
さらに攻め立てるホームチームは、85分、相手GKとDFのミスを突くと、中村がループシュートを放ってゴールネットを揺らしてみせた。
川崎は87分にも三笘薫がゴールを決めて、計5得点を奪って清水からリーグ3試合ぶりとなる勝利を収めた。
試合後の記者会見で、川崎の鬼木達監督は中村について「まず、憲剛の登場できる状況を、チームとして作り出したこと。それが素晴らしいと思います。みんなもそういう思いでやっていたと思います。本人もファーストプレーでシュートを打てたり、トレーニングからいい状態を保っていました。そういったものがゴールにつながり、やはり“持っている”なと感心しました」と、川崎のバンディエラの復活を喜んだ。
中村は「10か月ぶり……。ケガをしたのが11月2日の広島戦、等々力でした。そこから、今日のこの日のために全てを捧げてやってきました」と切り出して、次のように感謝の気持ちを語った。
「新型コロナウイルスに影響で、サポーターの皆さんが5000人しか入れなかったり、声を出せなかったり、いろいろありました。それでも等々力の温かさは僕に十分でした。みんな待ち望んでくれていたと思いますが、誰よりも自分が待ち望んでいた瞬間でした。点を取ろうとは全く思っていませんでした。とにかく今日ケガなく無事に過ごせるように、メンバー入りが決まってからずっと考えていました。それでみんなが点を取って出やすい形にしてくれたので、みんなに感謝したいです。まさかそこで点が取れるとは思わなかったので、思いがけなく得点できて、感謝しかない。この10か月が、すごく早送りのように駆け巡っていった1日でした」
そしてゴールシーンについて、次のように振り返った。
「(ループを選択したのは)転がってきた瞬間でした。(三竿)薫が少しプレッシャーをかけて、それに連動して相手のボランチのコースを切ろうとしたところ、もしかしたら視野に入ったのか岡崎(慎)選手の足に当たって転がってきたところでループを選択しました」
冷静に、客観的に、場面を切り取れって語れる視野は何も変わらず健在だ。ただ何より中村は、この“リスタート”を切れたことを、一歩目であると強調していた。
「今日は来てくれている人たち、DAZNで見てくれている人たち、待ち望んでくれている人たち、すべての人たちに、自分がサッカーをしている姿を見せたかった。それで点を取れたこともあって、ちょっとハードルが次節以降上がってしまいましたが、それも自分の今までやって積み重ねてきたものが出たわけで、自信を持ってやっていきたいです」
そして中村は「等々力には神がいる」と言った。
「今日をスタートにしなければいけない。戻るだけではなくて。一回プレーする姿を見せないといけないというのは、自分の中にありました。点を取れたのは予想以上。本当に良かったと思います。等々力には、正直、神様がいるのかなと思います。等々力でなければ、こうならかったはずです」
チームも10連勝が止まったあと1分1敗を挟み、5発大勝を飾った。10月には40歳の誕生日を迎える背番号14が、復活の一歩をしっかりと等々力のピッチで刻み、川崎も再び勢いをつけそうだ。
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[文:サカノワ編集グループ]