【マイナビ仙台L】「頭の回転を速くして」10番の浜田遥が信頼する松田イズム“サッカーをしよう”
新体制発表を行ったマイナビ仙台レディース。写真提供:マイナビ仙台/(C)mynavisenda
WEリーグに向けて“新生”始動!
今秋のWEリーグ開幕を前に、マイナビ仙台レディースが始動した。
チームの源流となるのはYKK東北女子サッカー部フラッパーズで、なでしこジャパンの大部由美コーチもプレーした、東北を牽引してきたチームだ。その後移管され東京電力女子サッカー部マリーゼに。2011年の東日本大震災で活動休止となり、選手たちは一時離籍を余儀なくされたものの、その後、受け皿として手を差し伸べたのが同じ東北エリアで活動するJ1ベガルタ仙台だった。
今シーズンから、東北で大切に育まれてきた3チームの精神を引き継ぎながらマイナビ仙台レディースとして新たな一歩を踏み出すことになる。
「男女関わらずあらゆるカテゴリーにおける指導実績の幅広さが活きると期待しています」(粟井俊介社長)
初代指揮官に招へいされたのは松田岳夫監督だ。読売ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)では3冠を達成、その後、ヴェルディユースの監督を経て、2010年にはJFLガイナーレ鳥取をJ2に昇格させるなど、その手腕を発揮してきた。
最も印象深いのは2013年から就任したASエルフェン埼玉での改革力だ。選手のみならずクラブ全体の意識を変え、“サッカーをしよう”というシンプルながらも頭脳フル回転の松田イズムを求めた。
苦難の連続ではあったが、選手たちの変貌は目を見張るものがあった。何より選手たちがその変化を心から楽しんでいた。その当時、進退をかけて松田監督が強く訴えていたのは選手たちの環境改善だった。その想いは叶わなかったが、プロリーグとして出発する新しいシーズンに彼の姿があることは実に感慨深い。
ベガルタ時代から走り切るサッカーはチームの真骨頂だ。そこに松田監督のエッセンスが加われば必ず化学反応は起こる。
「男子はより速く、より強くとスピーディになることで、サッカーの本質的なところを飛ばしてしまうこともある」と言う松田監督は続ける。
「女子においては、それをカバーするためにスピード・パワーだけでないサッカーの本質の部分、ボールをより多く動かす、相手の逆を取るなどといったところが必要になってくる。サッカーをしようよというのが合言葉になると思いますし、サッカーって何だろうっていうのをより選手たちに知ってほしいと思います」
そのサッカー観に一切のブレはない。
雪のなかで迎えた初練習を終え、チームの歴史を10番というエースナンバーとともに背負う浜田遥は松田監督に対し、「すごい福耳にビックリした(笑)」とおどけながらも、すでに大きな信頼を寄せていた。
「普段、頭を使っていなかったんだと痛感しました。プレースピードではなくて頭の中の回転を速くして状況を把握してプレーすることが大切なんだって……すごく楽しかったです」
アンダーカテゴリーでの代表経験を持つ若い選手も多く、松田イズムの浸透まで、しばらくは生みの苦しみを伴うかもしれない。ただ初日の練習で感じた変貌への確信があれば、進むべき道を見失うことはない。
WEリーグ開幕までまだ先だが、マイナビ仙台のまさに新しく生まれ変わったサッカーが楽しみだ。
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[取材・文:早草紀子]