「そもそも僕を覚えているかどうか…」昌子源がオリヴェイラ監督と7年ぶりに再会して
鹿島の昌子。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
[J1 13節] 鹿島 1-0 浦和/2018年5月5日/県立カシマサッカースタジアム
緊張感の張り詰めた90分間――鹿島アントラーズが浦和レッズとの熱戦を1-0で制して、今季初のリーグ連勝を収めた。
「優勝するうえでは、もう負けられない。ここから連勝を伸ばしていかないといけない」
そのように試合後に引き締めたのが、センターバックの昌子源だった。
この日は1対1の対応で後手を踏み、絶体絶命のピンチを招いたものの、味方のフォローを受けて失点を回避。その後は興梠慎三を軸とした浦和の攻撃陣にギリギリのところで対応して決定的な仕事をさせず、4月14日の8節・名古屋グランパス戦(〇2-0)以来、5試合ぶりの完封勝利を収めた。
浦和の指揮官に就任したオズワルド・オリヴェイラ監督が初めて鹿島に”凱旋”し、注目を集めた。ゴールデンウィークの『こどもの日』にチケットは完売し、満員の3万3647人が来場した。
そして試合前、昌子はオリヴェイラ監督と握手を交わした。ただ、そこで一抹の不安を抱えていたという。
「そもそも、僕のことを覚えてくれているのかなと思って……」
昌子が米子北高校から鹿島に加入した2011年、オリヴェイラ監督のもとで1シーズン仕事をしていた。とはいえ昌子は天皇杯2試合に出場したのみ。リーグ戦では11試合にベンチ入りしたが出場機会を掴めなかった。10代のルーキーのことなど記憶にすらないのでは、と思っていたのだ。
「ただ、あいさつできる機会があのとき(試合前)しかなかったので行ったら、まず僕の名前を呼んでくれたので、非常に嬉しかったです」
昌子はそう喜んだ。同時にそんな気持ちを察するかのようなオリヴェイラ監督の”一声”にも、人徳を感じるワンシーンだった。
「オリヴェイラ監督のサッカーは、僕はあまり覚えていないので、(スタイルに対する)対策は特になかったです。もちろん鹿島のことをよく知っている方なので、やりづらさはあっただけに、勝てたのは良かったです」
昌子にとっては、“オリヴェイラダービー”というよりも、浦和に無失点勝利を収め連勝したこと。そこに最大の価値を見出していた。
「何連勝しているのか気にすることないぐらい、ここから大きく勝っていきたいです」
そう鹿島のディフェンスリーダーに成長した25歳は堂々と語った。プロ選手になって初めてお世話になった監督との7年ぶりの再会。その目の前の90分間で、昌子がまた少し確かに成長を遂げた。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI