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【浦和】へグモ流4-3-3が直面する課題、酒井「あとは共有のところ」。岩尾が指摘した「勇気」

浦和の岩尾憲。(C)2024 Asian Football aConfederation (AFC)

ウイングも下がってきてしまい…「(まず前線から)出てほしい、それがプレスなのだから」。

[J1 7節] 浦和-鳥栖/2024年4月7日15:00/埼玉スタジアム2002

 J1リーグ浦和レッズが4月7日、ホームでサガン鳥栖と対戦する。3日の国立競技場でのFC東京戦は1-2の逆転負けを喫し、特に後半は終盤に差し掛かるまでほとんど相手ゴール前でのチャンスを作れなかった。

 ペア=マティアス・ヘグモ監督のもと、今季の浦和は4-3-3をメインシステムに、4-2-3-1をオプションとして戦ってきた。これまで2勝2分2敗。昨季までのリカルド・ロドリゲス元監督、マチェイ・スコルジャ前監督のもとでの戦い方と比較すると、より前から向かう意識が共有されているのは感じられる。

 しかし一方、FC東京戦では立ち上がりからボールを持たれた際、なかなかボールサイドへアタックへ行けず劣勢を強いられた。ボールの奪いどころがまだ明確化されておらずピンチが続いた。

 昨季までの浦和と比べれば前からプレスに行けている。しかし、4-3-3の理想である最前線から襲い掛かるようにプレスをかけて、ボールを奪えればその勢いのままゴールへ向かうという挑戦的なスタンスは、まだそこまで浸透していない印象だ。

 オリンピック・マルセイユやハノーファー96、そして日本代表でさまざまな監督のもとでプレーしてきた酒井宏樹に、ゼスチャーなどから見るとヘグモ監督はより高い位置から行きたいと考えているように見えるが? と問うと、「あとは共有のところ」と課題を挙げた。

「(相手がボールを持った際)どこまで持たれるのを許すか、どこで許さないのか。そこは大事になってくると思います」

「より前からは(プレスは)行けていると思います。あとは、そこの共有のところになってくるのではないでしょうか」

 選手それぞれが考える「前から」の意識の共有。レッズのキャプテンは、そこをどのように噛み合わせていくのかを課題にしていた。

 その点で岩尾憲は『勇気』をポイントに挙げていた。

 松木玖生と荒木遼太郎が上下にギャップを作り出してきた。浦和は次第に後方で対応しようとして、下がっていってしまった……。

 そうしたなか、3トップのウイングが中に入ってきてブロックを敷こうとしていたチームの守備を指摘された岩尾は、次のように振り返った。

「(まず前線から)出てほしい、それがプレスなのだから。出れないのであれば、出れないことを伝えて、それとは違った出ていけないためのプランを取らないといけない。(前線からプレッシングへ)出にくい感じはやっていて感じましたが、一つのシーンだけでなく、セカンドボールにもなかなか出ていけていけなかった。そこは勇気を持って出ていけないと、(ヘグモ監督の狙う)このプレスは成立しないかなと感じます。(課題は)一つだけではないですが、そこを相手に使われていたなというのはあります」

 5日のヘグモ監督のオンラインによる記者会見では、守備のバランスが悪いのではないか、という質問が続いた。これにはやや驚かされた。

 よりゴールを奪うためにヘグモ監督が就任した。昨季までの浦和は失点は少なかったものの、攻撃に迫力を欠いた。そうした現象があって、よりダイナミックさを生み出そうと、そこでヘグモ監督が招へいされた。

 ”昨季のほうが良かった”ような流れになるのは少し危険だろう。ボールを奪うところに練習の時間もかけられ、攻撃の連係をなかなか深めるところまで行けていないとも言う。攻撃の形をなかなか作れずにいるが、興梠慎三は「とはいえ昨シーズンも(ホセ)カンテの一発頼みになっていたところはあったから」と言っていた。

 結果もほしいが、内容ももちろん充実させていきたい。チームは今、一つの岐路にも立たされているのかもしれない。

 ただ例えばイングランド・プレミアリーグの首位に立つリバプールの4-3-3の他多胎方も決して”完璧”などではなく、ユルゲン・クロップ監督はあくまでも相手より多くゴールを奪うための選択だと言ってきた。先日も最下位のシェフィールド・ユナイテッドFCにカウンターから失点を喫しているが、まさに”勇気”を持ったプレーの代償であり、誰も咎めてはいない。チームとしても、最後には遠藤航(その試合では欠場したが)、その先にフィルジル・ファン・ダイクがいて、第2GKからレギュラーを掴んだGKクィービーン・ケレハーもいて、そこで食い止めればOKと割とアバウトに、ただしチームメイトを信頼し合い、あくまでもゴールを奪うことに主眼が置かれている。

 ”リスク管理”が優先されては、ダイナミックさを失う代償も払う(まだそのダイナミックさを構築している段階でもある)。もちろん最終ラインからボールを持ち出して、攻撃の起点になっていたアレクサンダー・ショルツの不在が響いているのは間違いない。

 FC東京戦も序盤の劣勢を凌いだあと、浦和の時間帯が来て、何度かカウンター的にチャンスを作り出せた。ただ本来の理想は高い位置でボールを奪い、前線3人の連動性と個の力でゴールを脅かす、さらにインサイドハーフが畳みかける(前線の連係からではなく個の打開頼みになっているのはまた別に気になることだが)。それが理想形だろう。

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 7日は自陣ゴール前からビルドアップしようとしてくるサガン鳥栖との対戦だ。仲間を信頼し、勇気を持って前へ立ち向かっていく。今後の一つ試金石でありモデルケースになるような、埼スタで一丸となっての勝利を掴みたい。

取材・文/塚越始
text by Hajime Tsukakoshi

Posted by 塚越始

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