【新章なでしこ】心に響いたニールセン監督の言葉とは? 松窪真心が描く20代の地図「U-20世代が終わり、“世界一”は、なでしこジャパンでしかできない」│vol.3
コロンビア女子代表とのトレーニングマッチで松窪真心は1得点・1アシストと結果を残した。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
SheBelieves Cupで受けた「もう絶望的でした…」という衝撃と、一段と強まった向上心。
松窪真心(Manaka MATSUKUBO , ノースカロライナ・カレッジ)は今年2月、ニルス・ニールセン監督の就任初陣となった「SheBelieves Cup」でなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)でのデビューを果たした。しかし、待っていたのは“衝撃”だった。
オーストラリア女子代表(〇4-0)との初戦は71分、コロンビア女子代表との第2戦(〇4-1)は88分、事実上の決勝となったアメリカ戦(〇2-1)は57分から、いずれも途中出場した。
いきなり世界のトップと対峙し、期待に応えるパフォーマンスは発揮できなかった。
松窪は振り返る。
「SheBelieves Cupはもう何もできなくて絶望的でした……。所属のノースカロライナに帰ってからも『このままだと代表には残れない』ってチームの監督に言ったぐらいでした。ボールが足につかず、周りが上手すぎてシンプルに『このなかで自分はプレーできないな』って。試合に出されても、みんなに迷惑がかかると思ってしまったんです。チームの監督は、では、どうしたらいいかという話をしてくれて、そこで整理ができていきました」
それだけに4月8日の北九州でのコロンビア女子代表戦、松窪は背水の陣という覚悟を持って臨んだ。それだけにPKを獲得できたものの、自分のパフォーマンスにガッカリしていた。
ただ松窪はその鬱憤を晴らすように、2日後に組まれたコロンビア女子代表とのトレーニングマッチで、1ゴール・1アシストと結果を残した。
「もうこのゴールで、ホッとしました」
結果だけではない“朗報”もあった。
2日前のコロンビア戦のショックを引きずりそうなところだったが、この日、ニールセン監督から「君が入ってくれてチームが変わった」と声を掛けられた。その一言が、松窪のそれまでの積もっていた悔しさを昇華させ、一つ吹っ切れたという。
「『シュートが課題だとマナカ自身も分かっているだろう? でも、それ以外の部分が良かった』と、ニールセン監督から言ってもらえたんです。それまで自分自身に対してネガティブな感情ばかりでしたが、監督のポジティブさに吹っ切れました。
課題はハッキリしました。すぐにどうこうできることではないけれど、まず守備の部分は意識を変えるだけで頑張れるし、そこだけはやってやろう! と思って、ガンガン守備で頑張りました」
ニールセン監督の前向きな言葉は、松窪の心を晴れやかにした。
「U-20世代が終わり、“世界一になる”ことは、なでしこジャパンでしかできない」
7月28日には21歳の誕生日を迎える。その夢は目標となり、松窪は20代の地図を描いていく。
(3部構成、了)
vol.1【新章なでしこ】20歳の星 松窪真心。ヒロインは泣いていた
取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA