【日本代表】森保ジャパンはW杯前にピークアウトしていたのか。「過去最高の一体感」の完成形、その先への課題

北中米W杯のブラジル戦後、顔を覆う日本代表の佐野海舟。写真:AP/アフロ

負傷明けの選手多数選出し、直前まで調整。「結束」が競争を阻害していた可能性も。

 FIFA北中米ワールドカップ(北中米W杯)に臨んだ日本代表は、本当に4年前のカタールW杯強くなっていたのか。森保一監督のもと、8年の長期政権でチーム力を高めたなか、東京オリンピック世代を中心としたチームは、すでにピークアウトを迎えた可能性もある。

 

 森保ジャパンの二次政権はブラジル代表に1-2で敗れ、ラウンド32で大会を終えた。大会を振り返ると、一つの仮説が浮かぶ。2026年3月……あるいはそれ以前にチームとしての完成形を迎え、本大会はすでにピークアウトしていたのではないか、という見方である。

 カタールW杯後、日本サッカー協会(JFA)の当時の田嶋幸三会長が森保一監督の続投を決断。8年間という長期政権のなか、東京オリンピック世代を軸に、信頼を置かれた選手たちは所属チームでより力を発揮することに集中できて、代表活動で再び集結するたびに組織の成熟度を高めていった。

 北中米W杯では、吉田麻也、長友佑都、南野拓実らベテランが支えとなり、選手からも「一体感は過去最高」という声が聞かれた。その結束力は、間違いなく森保ジャパン最大の武器だった。

 一方、その強固な一体感は、同じ時間を共有してきたメンバーだからこそ築けたものでもあった。

 アジア最終予選を圧倒的な成績で突破し、「日本は強くなっている」とチーム内外で共有された。しかし、特にアジア予選で成功体験を積み重なるほど、自分たちの現在地を客観視する機会は少なくなっていったのではないか。

 そうして得た自信を結束へつなげるため、「W杯優勝」という目標を共有し合った。ただし、いわばチーム内で成功体験が反復され、互いに補強されていく「エコーチェンバー」のような状態だった可能性もあった。

 加えて、森保監督はアジア予選でも、親善試合でも、攻撃的3-4-2-1を軸に、ベースの選手を据えて強化を続けた。その結束は、同時に新たな力が入り込む難しさも生んだ。

 北中米W杯では、東京オリンピック世代がチームの中核を担った。一方、その少し上の世代にあたる遠藤航が負傷離脱し、代わって町野修斗が追加招集された。さらに守田英正も招集されず、パリ・オリンピック世代も最終的に一人もメンバー入りできなかった。

 一方、所属先のアヤックスでは出場機会を得られずにいた板倉滉、冨安健洋が負傷から復帰し、なんとかメンバー入りを果たした。しかしコンディションを整えることが重視され、チーム力をさらに押し上げる存在になり切れたとは言い難かった。さすがに故障明け(リハビリ中)の選手が多すぎた。日本のような「ポット2」から上位に食い込むには、大会中に伸びるラッキーボーイも不可欠だった(前回の三笘薫のように)。

 もちろん、それぞれ事情は異なる。ただ結果として、東京オリンピック世代を中心に8年間かけて築いてきたグループが、そのまま集大成としてW杯に臨む形になった。

 高い結束力は武器だった一方、新たな競争や異なる世代との化学反応を試す融合は限定的だったと言える。

 そして本大会では、その完成形の前提が崩れた。

 三笘薫、南野拓実、遠藤航がコンディション不良を抱え、久保建英も大会中に負傷離脱。ベストメンバーでは戦えない状況になると、チーム全体のパフォーマンスも維持できなかった。

 ブラジル戦ではカルロ・アンチェロッティ監督がハーフタイムでサイド攻撃を修正し、試合の流れを変えた。一方、日本は5-4-1とゴール前を固めたものの守り切れず、反撃に転じることもできなかった。

 3月まで積み上げた完成度は高かった。しかし、それは同じメンバーが揃い、積み重ねてきた形を再現できることを前提とした完成形でもあった。

 その仮説は、年齢構成から見ても無視できない。

 三笘と鎌田大地は29歳、堂安律は28歳、上田綺世は8月で28歳、冨安も11月で28歳を迎える。年齢的にはパリ五輪代にもなる久保建英(東京五輪代表メンバー)は25歳。佐野海舟は12月26歳になる。現在の日本代表は、主力の多くが25~29歳という、経験とフィジカルが最も充実するとされる年代にあった。

 もちろん近年はルカ・モドリッチやハリー・ケインのように30代でさらに輝きを放つ選手もいる。リオネル・メッシのような例外的な存在もいる。

 日本代表の主力の多くは運動量や強度を武器に世界と戦ってきた。さらに三笘や冨安のように故障歴を抱える選手も少なくない。年齢構成やチームの成熟度を総合的に見れば、北中米W杯はこの世代にとって最も充実したタイミングだったと言える。

 だからこそ、この大会でスウェーデンとほぼ互角の戦いを見せ、強豪のオランダには勝てず、ブラジルに敗れた――この結果がすべてだ。

 もちろん、この「3月ピーク説」を証明することはできない。しかし、アジア予選で築いた形を、その後もブラッシュアップする選択をしたが、それがW杯で通用する完成形ではなかったことは事実だ。

 今大会は初めて「ポット2」に入り、強豪国からもある程度警戒される存在として挑んだ。その成功を否定する必要はない。

 ただ、「一体感は過去最高」という評価も、結果としてチーム内で共有された成功体験を強めることにつながってはいなかったか。完成度の高さは、日本代表を前進させた一方、変化への対応力や競争力を失わせる一因にもなっていた可能性がある。

 ブラジルはベスト16、オランダは日本と同じラウンド32で敗れたものの、いずれもやはり強かった。オランダにはよく追いついたものの、FIFAランキングのトップ8に入る両国が強すぎたことで、また日本の立ち位置が見えにくくもなった。

 北中米W杯は、その戦術を信じる大切さを示せたと同時に「チームとして熟成させる=完成形を追求する」限界も映し出した大会だった。

 この「3月ピーク説」は一つの仮説に過ぎない。ただ、アジア予選で見せた強さと、W杯で世界のトップと対戦した時の現実。そのギャップは、今後4年間を考えるうえで避けて通れないテーマになった。

 もちろん希望もある。クラブレベルと異なり、エースストライカーが力を発揮できれば、W杯で勝てるチャンスも膨らむ。ケイン、メッシ、クリスチアーノ・ロナウドらがそう証明している(逆にそのポジションが定まらないオランダは苦戦を続けている)。

 上田がさらにブレイクスルーを果たした存在になれば、日本代表ももう一段階上へ行ける可能性を秘めている。ただ、その一方で上田とその他のセンターフォワード陣の差は小さくない。「優勝」を掲げたことで泥臭くても勝つことがより重視されたが、苦境でこそゴールを奪い切る――そこへのこだわりも日本代表に残された大きな課題と言えそうだ。

 その道を切り開ければ、4年後、さらにこの仮説を突き抜けた強力な日本代表が見られるはずだ。

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