【日本代表】長谷部誠が語ったキャプテン論。「権限は何もない。大事なのはまず監督の考え」
長谷部誠と浦和の下部組織の選手たち。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
日本代表で通算9年、腕章を巻いてきて思ったこと。浦和下部組織の後輩たちへ伝授。
アイントラハト・フランクフルトに所属する元日本代表の長谷部誠が5月26日に埼玉スタジアムでブンデスリーガとの共同企画として、浦和ユースと浦和ジュニアユースの選手たち前に講話会を行った。そのなかで子どもたちからの質問コーナーが設けられ、次のような興味深い問いが出た。
「長谷部選手は日本代表でずっとキャプテンをやってきましたが、様々なクラブからとても個性のある選手が集まってきていたと思います。そういった選手たちを一つにまとめる時、どういったことを大切にしていたのでしょうか」
2010年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)から2018年のロシアW杯まで、通算9年にわたり日本代表で腕章(キャプテンマーク)を巻いてきた。そこで、長谷部が実践してきたこととは――。
長谷部は次のように答えた。
「キャプテンというのは、別に何か権限があるわけではありません。何か偉いわけでもない。チームの中で、何か方向性を決める時、そこで大事なのはまずやはり監督です。監督がどういうことをしたいのか。そこでキャプテンは、選手と監督の間に立つ。自分は監督とも、いろいろな選手ともコミュニケーションを取ってきました。日本代表という場所になれば、本当に自分の強いサッカー観を持った選手たちが多い。でも、別にそれを一つにまとめようとは思わなかったです」
監督がある決断を下す。一つにベクトルを向ける。それを限られた活動期間のなかでチームに浸透させる。そこで長谷部はコミュニケーションをとることで、監督から現場で戦う選手たちへ伝えるフィルターのような役割を担ってきたという。
「まず、監督がどう考えているか。日本代表は選ばれてくるチームで、監督と考え方が合わない、それを理解できない、であれば外されていくべき場所。だから、(監督の考えを理解するためにも)もちろんディスカッションはしたほうがいい。自分の意見と監督の考えが違っていても、話はしていくべき。ただ最終的なところでは、監督のやり方があるなかで、自分の色をどれだけ出せるか。そこを選手としては、考えるべき。ずっとキャプテンをやってきて、それは感じてきたことです」
無論、長谷部も日本代表で安泰などと思ったことは一度もなかったはず。そのなかで、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、ヴァヒド・ハリルホジッチ、西野朗……4人の監督のもと、キャプテンを任されてきた。もちろん、それはまず何より、監督の求める役割をピッチで実行してきてきたことで、指揮官からも、選手からも「信頼」を得てきた。そこも押さえておきたい重要な点だ。
そして現在、フランクフルトでもゲームキャプテンを務めることがある。ただ、その腕章の有無にかかわらず、クラブの誰もがピッチのリーダーと認める存在となっている。
長谷部が明かしたキャプテンとしてのスタンスと考え方。集団生活のいろいろなシチュエーションで参考になりそうだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI