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「セオリーではないが狙い目」あれが久保建英のJラストショーに。大分GKにとっても”楽しかった”対決│FC東京→日本代表

久保建英。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

高木駿「対峙するのは楽しかったんですけれど…」。

 6月1日の味の素スタジアムに来場した2万5175人は、しばらくの間、ちょっとした自慢話ができるだろう。ホームチームのファンはもちろん、おそらく大分のサポーターも。

 FC東京対大分トリニータ戦。レアル・マドリードへの完全移籍が決まった久保建英のFC東京ラストゲーム(この試合で契約満了)となり、圧巻のパフォーマンスから2ゴールを奪ってみせたのだ。

 試合もFC東京が3-1で勝利を収めた。大分もオナイウ阿道の持ち味を生かしたゴールで、一時1点差に詰め寄るなどナイスゲームを演じた。だからこそ、久保のハイパフォーマンスはより際立ったと言えた。

 大分のGK高木駿は試合後、久保との対決を「対峙するのは楽しかった」と振り返りつつ、「あの失点は悔やまれた」と唇を噛んだ。最近のプレーを分析し、プレーをインプットして臨んだ。シュートをどのタイミングで狙ってくるのかも予想できた。しかし、それを上回ってきた。

 FC東京の1点リードで迎えた39分、ボール奪取からペナルティエリア内に持ち込んだ久保はDFふたりに付かれながらも、そのひとりの股下を抜くシュートを決めた。

 高木はそのシーンを、次のように振り返っていた。

「久保くんは視野が広い。そのなかで、あそこはゴールしか見ていなかったので、『絶対に打ってくる』と思いました。そこでディフェンダーが食いついたところ、股下シュートを打たれ、それが(DFに)当たって入ってしまった。セオリーではないけれど狙い目のところ。札幌戦(5月12日・12節)でも同じようなシチュエーションで決めていました。あの局面での速さは彼のすごいところ。それにやられてしまいましたね」

 DFがGKのブラインドになっている状況を、久保は瞬間的に活用してきた。打ってくるとは察知していた。しかし、防ぎ切れなかった……。

「対峙していたディフェンダーが一番大変だと思いますが、(久保は)相手がどうしてこようとしているのかをよく見ていて、シュートも上手い。そういった相手の食いつきをふんだんに使ってくる。対峙するのは楽しかったんですけど、失点シーンだけはちょっと悔しかったです」

 想像を上回る想像。そのさらに上へ行こうとする駆け引き。

 敗戦と失点を悔やみながらも、高木のある意味”完敗”を受け入れている姿勢もまた印象的だった。

 さらに後半アディショナルタイムにもバックパスをかっさらわれて、試合を決定づける久保のこの日2点目を決められた。大分にトドメを刺す一撃だった。

 そして試合後のヒーローインタビューで久保は青と赤で埋まったゴール裏に向かって、「サポーターって本当にいいですね。力になります」と感謝した。その後日本代表に合流し、6月4日の18歳の誕生日でFC東京との契約が切れたことが判明し、レアル・マドリーへの移籍が決まる。

 ラストゲームでの2ゴール。自身の17歳最後の試合でもあった久保が、FC東京に「記録」と「記憶」を残す特別な1日となった。

文:サカノワ編集グループ

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