【コパ】なぜカバーニはPK、中島はなし?VARの基準「明白な間違い」「見逃された重大事象」
日本の中島翔哉(左)とウルグアイのエディソン・カバーニ(右)。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
ゴールに直結するファウルの”見逃し”の可能性があればVARと協議。
[コパ・アメリカ GS②] 日本 2–2 ウルグアイ/2019年6月21日(日本時間)/アレーナ・ド・グレミオ
コパ・アメリカ(南米選手権)グループステージ2節、日本代表が2-2でウルグアイ代表に引き分け、両チームともに勝点1を分け合った。この試合で物議を醸したのが「VAR」(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による判定だった。
日本の1点リードで迎えた31分、ペナルティエリア内での競り合いで植田直通とエディソン・カバーニが競り合い、植田がボールをクリアしたかと思われた。が、アンドレス・ロハス主審はVARと協議したうえで、ピッチ上に設置された「オンフィールドレビュー」(OFR)を活用。植田が足裏でカバーニにタックルに行っているとして、PKを宣告した。
おそらくVARがなければ、そのままプレーは続行されていたケースだ。また、カバーニもVARがあることで、やや大げさに倒れたようにも見えたシーンだった。そして、このキックをルイス・スアレスが決めて1-1となった。
一方、48分、中島がペナルティエリア内でルーレットターンをして相手をかわしたところ、相手と接触したかと思われたが……ここではノーファウルで続行。中島や日本の選手はファウルを主張したものの、主審はプレーが中断したあともVARとの協議を行わなかった。
なぜか――?
ここで改めて、国際サッカー協議会(IFAB)が定める競技規則の「VARの手順 ― 原則と実践および進め方」の項目を確認したい。
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原則
サッカーの試合においてVARを用いる場合、様々な原則に基づかなければならない。
これらは、VARを用いるすべての試合において適用されなければならない。
1. ビデオアシスタントレフェリー(VAR)は試合映像に自主的にアクセスできる審判員であり、以下に関する「はっきりとした、明白な間違い」または「見逃された重大な事象」の場合にのみ主審を援助する。
a. 得点か得点でないか
b. ペナルティキックかペナルティキックでないか
c. 退場(2つ目の警告(イエローカード)によるものではない)
d. 人間違い(主審が、反則を行ったチームの別の競技者に対して警告したり退場を 命じた)
2. 判定を下すのは、常に主審でなければならない。
つまり、主審が「判定を下さない」 で、VARに判定を下させることは認められない。
反則かどうか疑わしいが、プレーを続けさせた場合であっても、その反則についてはレビューすることができる。
3. 主審が下した判定は、ビデオによるレビューでその判定が「はっきりとした、明白な間違い」であると判明した場合を除いて、変更しない
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今回のシーンで言えば、まず、足を出すアクションを起こした植田のファウルがあったかどうか。主審はその確認をVARと行ったうえで、OFRを活用。そこでファウルの「見逃された重大な事象」があったとして、PKを宣告したことになる。
一方、中島の突破に関しては、最も近くでそのプレーを見ていたのもまた主審であった。DFのハンド、植田のようなアクションを起こしてファウルがあったかどうかなど疑義は発生していない。主審の”見逃し”にはあたらず、ジャッジを下す裁量が委ねられたと言えた(つまり微妙かどうかであり、ファウルかどうかは主審の判断を尊重)。
ロシア・ワールドカップ前後から欧州や南米でも本格採用されて、まだ2、3年とあって、VARはまだ課題も多い。原則では、あくまで判定を下すのは「主審」であり、できる限りVARには依存しない――というスタンスを取っている。
当面は、ゴールに直結する「はっきりとした、明白な間違い」または「見逃された重大な事象」かという点を考慮したうえで、VARの活用にも目を向けていきたい。
文:サカノワ編集グループ