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高木俊幸の苦悩と充実。物語るC大阪のポテンシャル

C大阪の高木俊幸(左)と、湘南の杉岡大暉。(C)SAKANOWA

緻密さが増す。だからこそ求められる高木のダイナミックなプレー。

[J1 17節] 湘南 0-2 C大阪/2019年6月30日/Shonan BMWスタジアム平塚

 セレッソ大阪のFW高木俊幸は湘南ベルマーレ戦、後半途中の71分に最初のカードで、奥埜博亮と代わって投入された。やや運動量の落ちてきた湘南に対し、背後のスペースを突くことで、DF陣のフリーでの攻撃参加を防ぐとともに、自身も試合を決定づけるゴールを狙っていった。

 前者の「守備」的な部分はクリアして勝利をもたらした。が、後者の「攻撃」的な部分は、今回もまた持ち越しとなった。

 高木は試合後、次のように振り返った。

「リーグ戦に関しては、やりたいことやスタイルが少しずつできつつあり、メンバーも徐々に固定されてきています。(リザーブの)自分たちは個人の結果はもちろんですが、こうして途中出場した時にどういったことを見せられるかが大切。展開にもよりますが、今日であれば僕らが追加点を取ることが求められていた。そこで取っていれば……、僕のみならず、途中出場の選手が乗っていけて、チームもさらに乗れた。そういった競争をさらに活性化させるためにも、結果がほしいところでした」

 ドリブル突破もあり、スピードを生かして背後のスペースも狙える。そんな”ジョーカー”高木を試合終盤の苦しくなる時間帯に送り出し、展開に見ながら、山下達也、田中亜土夢と、さらなるカードを切る。隙を見せることなく1試合トータルで勝ち切る、そんなチームの総合力の差を示した。

「毎試合、しっかり相手を研究したうえで、それに合わせた戦術を組み、トレーニングをして臨んでいます。それが上手くこうしてハマれば、手堅くしっかり勝てると感じながらできています」

 もちろんスタメンで出場したい。ただ、高木も間違いなく、貴重な戦力として必要とされている。そのあたりのメッセージも込めているロティーナ采配は見事だ。

 高木は静かに熱く語る。

「チャンスがないわけではないと思っていますし、何か一つ違うところを見せることが求められていて、そこができている気はするけど、最後を決め切れていない。そろそろ1点決めて、そうした焦るような気持ちを落ち着かせたいところです」

 今季これまでリーグ11試合1得点。先発は1試合。その1ゴールは5月11日の11節、横浜F・マリノス戦(〇3-0)で水沼宏太のクロスにニアサイドへ飛び込みヘディングで決めたもの。チームも好調なだけに、そろそろ”足”でも決めたいと疼く。

 試合後には、ロティーナの名参謀であるイバンコーチとディスカッションする姿があった。

「ゴールキックのシーンでの立ち位置の話で、ベンチからずっと言われていた指示と自分の思っていることを、話し合って擦り合わせていました」

 そのように緻密さも増してきている。

「自分たちがどのように、というより、相手ありきでもある。毎試合ちょっとした狙いの変化があり、その中で、自分たちのボールを持っている時のスタイルも出てきている。湘南はプレッシャーをかけに来ていた分、裏のスペースを狙えた。前半はなかなか突けきれずにいましたが、後半に修正できて、相手も消耗してきたところ、自分たちが入った時間帯、狙っていた背後のスペースを突けました。意図した試合になったのかなと思いました」

 ディテールによりこだわった戦い方。言い替えれば、そのなかでこそ、高木のダイナミックなプレーが必要とされているのだろう。一巡目の17試合を終えて8勝2分7敗で7位。どのように高木自身であり、チームが変化を遂げていくのか――それはロティーナ監督をはじめまだ誰も分からない未知の領域であり、だからこそ後半戦が楽しみだ。

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取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Posted by 塚越始

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