イニエスタが湘南戦でかけた魔法の数々。齊藤未月「もしもバルセロナと対戦したら…」

神戸戦でフル出場した湘南の齊藤未月。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

分かっていてもやられる。分かっているようにボールを奪われる。

[J1 19節] 湘南 3-1 神戸/2019年7月14日/Shonan BMWスタジアム平塚

 湘南ベルマーレ対ヴィッセル神戸戦、試合は湘南が鮮やかな逆転勝利で約3か月半ぶりとなるリーグ連勝を収めた。一方、スタンドを埋めた1万4000人を超える観衆に、圧巻の技の数々でため息をもたらしたのが神戸のアンドレス・イニエスタだった。

 昨年の神戸加入後、最初のアウェーゲームで訪れたのがこのBMWスタジアム平塚だった。その試合では自身もゴールに絡み2-0の勝利を収めている思い出の地でもある。

 そして今回も20分に高精度ロングフィードから古橋亨梧の驚愕ミドルによる先制点を演出。さらに吸い付くようなトラップや、前線にいるダビド・ビジャやウェリントンの特長を引き出すスルーパスなど数々の『離れ業』を披露し、何度か見せ場を作り出した。

 マッチアップする機会が多かったのが先のポーランドU-20ワールドカップで、U-20日本代表の主将を務めた齊藤未月だった。齊藤は試合には勝ったもののイニエスタについて、「世界のプレーでした」と脱帽していた。

 まず神戸の先制点の場面。まさに一瞬の隙を突かれたという。

「ウェリントン選手の前に僕と金子が立つという話をしていて、あの場面では、ウェリントンとイニエスタが同サイドにいました。どっちに行くか迷って少し目を離したところを使われ、後手を踏んでしまいました。あそこは僕が集中しなければいけませんでした」

 まさか、という位置から完璧なフィードが、古橋の足もとへ飛んでいった。

 そのシーンのみならず、齊藤は「世界レベルの選手とこうして戦えたのは大きかったです。いいようにやられてしまいました。分かっているけれど、やられてしまう。もしも(イニエスタのいた)バルセロナと対戦したら、ボールを奪えるのだろうか……と思いながらプレーしていました」

 ボールを奪いに行こうとすれば、察知されてかわされた。その感覚に驚かされたという。

「(齊藤など)敵が来るタイミングが、あと何歩で、あと何秒で届くのか、イニエスタ選手はすべて分かっている。と言いますか、分かっているように見える、分かっているようにやられてしまう。だから、いつ行っても、自分が遅く感じてしまう。そのタイミングを外すことで、出端を挫かれていました。それをとても簡単にやっているように見えて、俺にはそれはできないです」

 まるでこちらの意図を先読みするかのように、タイミングを外し、次のプレーにつなげられた。齊藤は唸った。

「だから、僕のプレッシングを嫌がられているとは、あまり感じませんでした。むしろ、今回は前線の選手たちがしっかり追うことで、(守備に軸足を置く)山口選手たちのほうが少し嫌がっていたのかなと感じました。イニエスタ選手にボールが集まることは分かっていたので、それ以外のところで、みんなが頑張ってくれた。そのお陰で、いい展開に持っていけたんだと思います」

 イニエスタにボールを集めさせない。それができたからこその勝利だったという。

 逆に言うと、その限られたボールに触れる機会のなかで、イニエスタは抜群のセンスを発揮していたということだ。

「ボールを奪ったと思っても、そのあと、なぜかボールが集まっていく。吸い寄せられるように。イニエスタ選手のところに来ていました」

 振り返ってみると、確かに中盤で誰よりも自分の「時間」を作っていたのはイニエスタだった。ただ、そんな傑出したイニエスタのいる「神戸の攻略法」と言える戦い方を披露してみせたのもまた湘南だった。今回は前線からのプレッシングのスタート位置など、かなり細かくスカウティングして臨み、それが奏功したそうだ。

 試合後の記者会見で湘南の曺貴裁監督は、ゴールを決めた杉岡大暉がコパ・アメリカ(南米選手権)を経験したことで「寄せの速さが変わった。百聞は一見に如かず。僕がずっと言って変わらなかったところが、ひとつ行くだけで変わった」と言っていた。今回のイニエスタやビジャとのガチな対決も、齊藤をはじめ湘南の選手たちにとって、最高の生きた教材となったはず。しかも昨年のBMWスタジアムでのリベンジも果たせた。

 あとは齊藤がちらっと上記のように語っていたが……。スペインリーグ? UEFA欧州チャンピオンズリーグ? あるいはFIFAクラブワールドカップ!? 将来、さらに鍛錬を積んだ彼がバルセロナと対戦する姿も、ぜひ見せてもらいたい。

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[文:サカノワ編集グループ]

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