条件チェック。南野のリバプール移籍、労働ビザ問題は大丈夫?
南野拓実(日本代表)。写真:徳原隆元/(C)Takashi UEGISHI
浅野、井手口、板倉…近年、日本人選手が阻まれてきたが――。
イングランド・プレミアリーグのリバプールFCが、オーストリア・ブンデスリーガのRBザルツブルクに所属する日本代表FW南野拓実の獲得を検討していることが、イギリス主要メディアで大々的に報じられた。違約金は960万ドル(約10億4000万円)で、なかには移籍合意に達したとも伝えている。
さて、その移籍が実現したとして、南野がプレミアリーグで実際にプレーするために、もう一つ突破しなければいけない関門がある。外国籍選手としての労働ビザ(許可証)の取得だ――。
近年その条件はより厳しくなった。浅野拓磨(アーセナルFC→VfBシュトゥットガルトなど→パルチザン・ベオグラード)、井手口陽介(リーズ・ユナイテッド→クルトゥラル・レオネッセ→グロイター・ヒュルス)、板倉滉(マンチェスター・シティ→フローニンゲンFC)、食野亮太郎(マンチェスター・シティ→ハーツ)など、プレミアリーグのビッグクラブと契約は結んだものの、レンタル移籍で放出されるケースが続いているのは、それも関係している。
これはイギリス国内の若手選手の出場機会を保護し、一方、世界で認められた一流選手を迎え入れるためでもある。ひと昔まで認められた、クラブの名監督による「鶴の一声」で特別にビザが下りる、ということは原則的にはなくなっている。
外国籍選手がプレミアリーグで労働ビザを取得するための条件は以下の通りだ。
まず一発クリアできるのが、国際Aマッチでの出場歴である。
FIFAランキングと年齢によって細かく区分されて、非常に厳しい設定となっている。日本代表は現在28位である。
22歳以上は、過去2年間が対象。FIFAランキング21位から30位以内であれば「国際Aマッチ公式戦60パーセント以上」が条件になる。FIFAランキングが30位から50位だと「75パーセント以上」が条件に。また21歳以下は、対象期間が1年間となる。
FIFAの拘束力が働かない大会(コパ・アメリカ、現在開催中の東アジアE-1選手権)や親善試合は対象外。ただし、公式戦の出場30パーセント未満の選手であった場合、親善試合を含めてもよい。
南野は過去2年(2018年1月から)の公式戦、ロシア・ワールドカップ4試合、アジアカップのグループステージ1試合を除いて出場している。21試合中15試合で、「71.4パーセント」であり、条件をクリアしている。この1年間の「公式戦」であるアジアカップとカタール・ワールドカップ(W杯)アジア予選の出場は、実に11試合10試合で「91パーセント」である。
従って、上記に挙げた日本人選手とは異なり、イギリスでも南野は「即戦力」として認められることになる。
ちなみに……この条件を満たせない場合、「例外パネル」があり「ポイント制」で、労働許可が下りる。
移籍金がプレミアリーグ基準の75パーセント以上(3ポイント)、または50パーセント以上(2ポイント)、選手のサラリーがプレミアリーグ基準の75パーセント(3ポイント)、または50パーセント以上(2ポイント)など。
また、欧州6大リーグあるいはFIFAランキング20位以内の南米のチームで稼働可能な30パーセント以上プレーしている(1ポイント)。UEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ、コパ・リベルタドーレスで稼働可能な30パーセント以上プレーしている(1ポイント)。
さらに他にも、アジアカップ、アフリカネーションズカップ準決勝以上(1ポイント)、過去1年以内の大陸別選手権の予選ラウンド以上の稼働可能な30パーセント以上に出場(1ポイント)、6大リーグやFIFAランキング20位内の南米クラブの2部リーグで稼働可能な30パーセント以上でプレーしている(1ポイント)など、「例外」が設定されている。
このうち「5ポイント」の獲得が条件になる。
こちもまた補足すると、そのポイント制だったとしても、南野は条件をクリアしている。
武藤嘉紀はドイツ・ブンデスリーガでプレーしていたこともあり、この「例外パネル」によりニューカッスル・ユナイテッドFCに移籍できた。
ということは、日本人選手をプレミアリーグに輩出するためには、森保一監督のワールドカップ予選をはじめとする起用法が、実は大きな意味を持っているという一面も見えてくる。あるいは6大リーグでコンスタントにプレーすることでもチャンスを見出せる。
いずれにせよ、ザルツブルクで結果を残し、森保ジャパン発足からレギュラーとして活躍してきた24歳のアタッカーが、欧州と世界のナンバーワンを狙うクラブの扉をついに開こうとしている――。正式発表が待たれる。
関連記事:好調ソシエダが来季、久保獲得を検討。ウーデゴールのレアル復帰の場合には…
[文:サカノワ編集グループ]