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田中碧のVAR一発退場。日本の盲点?「アキレス腱ルール」を考える機会に

田中碧。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

今回の判定は明らかに厳しいが…。欧州主要リーグで進む選手保護、スペインリーグは厳罰を「明文化」。

[タイU-23アジア選手権 GS3節] 日本 1-1 カタール /2020年1月15日/ラジャマンガラ・スタジアム

 タイU-23アジア選手権のグループステージ( GS )最終3節、すでにグループステージ敗退の決定していたU-23日本代表はU-23カタール代表戦と1-1で引き分けた。日本は1分2敗の勝点1でグループ最下位(4位)に。サウジアラビアが1位、シリアが2位でベスト8進出。昨年のアジアカップ王者で、2022年のワールドカップ開催に向けて東京五輪を重要な位置づけにしていたカタールだが、グループステージ敗退に終わった。

 この試合、前半終了間際の球際での競り合いのシーン。ボランチの田中碧がボールを奪ったあと、体を支えようとした右足が、飛び込んできた相手の足首に入ったとして、一発レッドカードで退場処分を受けた。シンガポールのムハンマド・タキ主審がビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)からの進言で自らが映像でチェックするオンフィールドレビュー(OFR)を採用。時間をかけたのち、その厳しい処分を下した。

 決して悪質とは言えず、田中が足首を蹴る形になったのも明らかに不可抗力だった。そもそも、そこまで危険とも言えない。見方によっては相手が飛び込んできて、ややリアクションも過剰にさえ見える。

 その一方で、国際的に敏感になっている「アキレス腱」へのチャージでもあった。そこにも着目したい。

 一見そこまで悪質に見えないものを含め足首を削るファウルは発生し続け、スペインリーグ(ラ・リーガ)は2019-2020シーズンから独自に「後方からのアキレス腱を踏みつける行為は、いかなる場合もレッドカードにする」と明文化した。また、そこまで明確には示していないものの、プレミアリーグやブンデスリーガでもアキレス腱へのファウルで、一発レッドカードになる傾向が強まっている。

 選手生命をも脅かす後方からのファウルとアキレス腱を巡る事故を減らすため、スペインはまず一足早く態度を示したと言える状況だ。

 Jリーグでは2019シーズン、VARの一部導入に伴い、決定機阻止のDOGSO(ドグソ)の理解が急速に進んだ。さらにはハンドなどに関する2019-2020シーズンからの新ルールの解釈も、ファンの間ではスムーズに浸透していった。

 一方、世界的にさまざまな解釈がされつつある「アキレス腱ルール=ラフプレーからの選手保護」について、確かにそこまでの議論は行われずにいた背景もまたある。

 もちろん、アキレス腱ルールは、あくまでも欧州の一部の話である、とも言える。ただ、そういった風潮が今回の判定にもリンクした、という現実にも目を向けたい。

 田中への判定も、主審あるいはVARによってはイエローカードで済んでいた、ファウルにとどめていた場合もあったと言える。そういった意味で、主審の裁量の範囲内で下される判定だったと解釈できる。このレッドカードが一つのキッカケに、アキレス腱へのファウル、悪質なファウルの基準について、Jリーグや日本で議論を深める機会になり得ると言える。いずれにせよ2020シーズン、ラフプレーへの判定基準が、Jリーグでも一つのテーマになってきそうだ。

 アジアサッカー連盟(AFC)は、今回のムハンマド・タキ主審とVARのやりとりを、一部でも公開してみてはどうだろうか(そのほかのVAR案件も、もちろん興味深い)。むしろ、そうすることで主審やVARの立場や威厳を守ることにもなる。

 本来であれば、接触の有無など確認するのはVARのみでできる作業で、OFRは不要だったはず……など、やはりVARを巡る議論もあとを尽きない。それぞれの立場があって、全員が100パーセント納得し合うことは難しいに違ない。ただ、主審とVARのやりとりが分かれば、なるほど、そういう解釈だったのかという、理解にはつながるはずだ。

◆U-23日本代表の結果と日程◆

◇グループステージ◇
1月9日(木) 日本(●1-2)サウジアラビア
日本の得点者:食野亮太郎
1月12日(日)日本(●1-2)シリア
日本の得点者:相馬勇紀
1月15日(水)日本(△1-1)カタール
日本の得点者:小川航基

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[文:サカノワ編集グループ]

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