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【検証】天皇杯日程問題。Jリーグは21年度から「12月中旬決勝開催」を要望へ

天皇杯を制したヴィッセル神戸。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

クラブW杯の4年開催への変更を転機に。休めない一方、「休みがありすぎる問題」も起きている。

 Youtubeの「Jリーグ公式チャンネル」の1月23日更新回で、Jリーグの原博実副理事長がこのほど改めて問題にあがった天皇杯日程問題について、リーグ側の見解を示した。天皇杯は日本サッカー協会(JFA)主催の大会であるが、Jリーグサイドの現場からの声を届ける形で、クラブワールドカップ(W杯)が4年ごとの6月開催になる2021年度から「天皇杯決勝を12月中旬開催にできないか要望し、JFAと話し合っている」と現状を報告している。

 今年元日の天皇杯決勝まで戦った鹿島アントラーズが、ヴィッセル神戸に敗れたことで、Jリーグ3位の代表チームとして1月28日に行われるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフオフのメルボルンビクトリー戦に臨むことに。チームはザーゴ新監督を迎え、1週間後の8日に始動。元日決勝に臨んだ主力組は始動したあとに合流したものの、チームとして練習する機会は限られ、結果的にメルボルン・ビクトリーに0-1で敗れ本選出場を逃した。

 また先ほどのプレシーズンマッチの水戸ホーリーホック戦に臨んだ鹿島のキャプテン内田篤人が負傷。右下腿三頭筋損傷で全治4週間と診断された。

 もちろん、日程問題は一因にすぎない。

 ただ、天皇杯とACLを含め全タイトルを狙ってきた鹿島が(あるいは浦和レッズも)、今年のみならず選手が疲労を蓄積したまま戦い続けている。そこに日本代表、年代別の代表の活動も加わる。その状況はもやは看過できないところまで来ていると言っていい。

 原副理事長はこのコンテンツの中で、元日決勝開催の天皇杯が日本サッカーを支えてきた歴史を踏まえつつ、決勝に臨んでいる2チームのみの問題ではないことに言及している。

 移籍が決まっているある選手は、そのチームが1月上旬に始動する。そこで、選手の権利として元日決勝から2週間の休みをとれば、いきなり出遅れを余儀なくされる。一方、そこで無理をすれば、どこかで疲労を蓄積したまま臨むことになる。”強いチーム”の選手ほど悪循環に。

 原副理事長は選手会の声を代弁する。

「選手会としては、シーズン中はハードスケジュールでもいい、しかし、終わりはある程度揃えてほしいと言われている。リーグ戦が終わり、入れ替え戦などがあり、天皇杯が12月中旬に終われば、みんながある程度はまとまった休みをとれて、移籍や交渉などへの影響も平等になる」

 毎年12月に開催されてきた国際サッカー連盟(FIFA)主催のクラブワールドカップ(W杯)が、2021年から4年ごとの6月開催に移行する。そのタイミングで、「次回の天皇杯(20年度は21年元日決勝開催が決定)は100周年で100回大会。そこを一つの区切りに、(21年度から)新たにカレンダーを組めないだろうかという議論をしています」と、Jリーグ側は天皇杯決勝の12月中旬開催を、JFAに要望していくいう。

 また、休みがない問題の一方、「休みがありすぎる問題」も起きている。これはJリーグサイドの課題であるが、J2のレギュラーシーズンは11月上旬に終わり、そこから3位から6位チームによるJ1昇格参入プレーオフに突入する。つまり、J2の1・2位、7位以下の選手は、次シーズン開幕まで約3か月以上、試合がない状況なのだ。

 天皇杯の元日決勝のコンテンツ力は大きいと言われてきた。ただし、さらには契約も絡んで、決勝での選手のパフォーマンスにも大きな差が生じるなど、問題は多岐に及ぶ。

 原副理事長は説明する。

「移籍のことなどもあり、休みもある程度平等になれば。クラブW杯の開催時期が変わるのは転機で、いいキッカケ。Jリーグと選手会からもそういった声が出ていて、協会とも話し合っています。ちょうど変えるタイミングかな、と。選手会からの要望も強いです」

 ちなみに、イングランド、スペイン、ドイツなどはリーグ最終節のほぼ翌週にカップ戦の決勝が組まれ、シーズンの有終を飾る形になっている。イタリアのカップ戦はシーズン終盤に行われている。もしも12月中旬に天皇杯決勝を組み込む場合、J2・J1プレーオフなどとの兼ね合いも課題になってくる。

 また、ACLプレーオフの開催時期が東地区と西地区で柔軟に設定する案も検討されているということだ。

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[文:塚越始]

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