浦和の横断幕禁止「反対」表明。Jリーグがコロナ禍での意思決定に「もう少しリスペクトを」と指摘
浦和レッズのサポーター。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
村井チェアマンが「問題の本質は、サポーターの善良なる思いと運営現場の現状のねじれにあると捉えています」と説明。
Jリーグは6月22日に臨時実行委員会を開いて、翌日の理事会を前にリーグ再開後の取り決めなどについて改めて詰めた。冒頭では、浦和レッズが横断幕掲出禁止への反対を唱える文書と提言書を前回の実行委員会で提出した件について議論された。そこで、この新型コロナウイルス禍での意思決定のあり方について改めて徹底。全56クラブが一つの意見になることは難しく、議論は徹底したうえで、最終決定したあとは遂行していくことを今一度確認した。
浦和は16日の合同委員会でJリーグが決定した横断幕掲出禁止というリーグ統一ルールに対し「反対」の意を伝える文書を、原博実副理事長宛に提出したと発表。さらに全国55クラブの実行委員に「日本のフットボール文化の在り方について」の提言書も送った。そのうえで浦和は「いつどんな時もファン・サポーターとともに戦ってまいります。これからも無観客試合において横断幕掲出許可を求め続けていく所存です」とメッセージを発信していた。
村井満チェアマンは今回の実行委員会のあとのオンラインの記者会見で、「会議の冒頭、私と原さんから、浦和レッズに対して、思うところをお伝えしました。その内容に関して、立花社長からも見解を表明していただきました」と、この件について報告した。
新型コロナウイルスの影響下、Jリーグの意思決定のあり方について、全56クラブが一致することは難しい状況にあった。例えばリーグ再開日についても、様々な主張が出ていたという。そのため、決定するまでは議論百出で様々な意見を出していくこと、そのうえで一つ決まったことに関しては「小異を捨てて大同に就くことで、決定事項に対しリスペクトして対応してほしい」(村井チェアマン)と申し合わせていた。
横断幕の件も運営会議で3回にわたって議論し、さらに実行委員会でも村井チェアマンが「サポーターの思いを受け止めることはできないだろうか」と提議。そうしたなか、最終的に結論が出たはずだった。そのため村井チェアマンは「浦和レッズは他のクラブに対して、リスペクトほしいという思いがありました」と語った。
一方、ファンやサポーターに向けて、村井チェアマンは「自分の分身といえる応援グッズを持ち込みたいという思いは疑う余地なく有難く、素晴らしい思いだと解釈しています」と受け止めた。そのうえで「今回の問題の本質は、サポーターのそうした善良なる思いと運営現場の現状のねじれにあると捉えています」とも語った。
リモートマッチ(無観客試合)に関し、70ページにわたるプロトコルをまっとうするだけで現場は相当な労力が求められる。一人のPCR検査の検体の扱いだけでも神経を相当に使わざるを得ない。一方、ファンも強い思いがある。そうしたなか、村井チェアマンは「この2試合に関して、開催に集中させてほしいというのが本音だったと思います」と現場の声を伝え、理解を求めた。
また、村井チェアマンは、サポーターとリーグの関係は、本来、規則で縛るものではなく、「文化」の領域だと捉えているとも理解。「リーグやクラブとしての説明力が低い部分もあるかもしれません。各クラブの判断という案も出ましたが、『できないクラブ』が説明責任を果たすことに時間がないという実情もあったと思います」と説明した。そのうえで、「サポーターの皆様には不自由をかけて申し訳ない思いですが、1日も早く本来あるべき姿に戻りたいと思っています」と伝えた。
一方、浦和の立花社長からはJリーグと各クラブへの謝罪があり、「今後しっかり議論したうえで一つに決めたことはともに遂行していく」ことで改めて意思合意したそうだ。
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[取材・文:塚越始]