【鹿島】内田篤人が言った「シャルケへ一発で行く選手が出てほしい」の真意
2013年、チャンピオンズリーグのチェルシー戦に臨んだシャルケの内田篤人。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
『勉強』に行くのではなく『勝負』を。
元日本代表DF内田篤人が8月24日に行った鹿島アントラーズでの引退記者会見の中で、横浜F・マリノスから彼の古巣であるドイツ・ブンデスリーガのウニオン・ベルリンに移籍した遠藤渓太へのメッセージを求めた。するとシャルケ04、ウニオンでプレーしてきた内田は遠藤にエールを送るとともに、これから欧州主要リーグを目指す選手にもメッセージを語った。
内田は遠藤に対し、「今はドイツ1部ですね(内田が在籍した時は2部だった)。これから、良い時期、悪い時期があると思います。それを乗り越え、安定したパフォーマンスを見せていって、試合に出続けて活躍してほしいです」とエールを送った。
さらに32歳の元日本代表は現在Jリーグでプレーする若い選手、あるいは将来欧州トップリーグでのプレーを目指す選手に対し、次のようにゲキを飛ばして背中を押した。
「最近、海外に移籍する選手がまた増えていますが、一発目でシャルケやドルトムントあたりのレベルのチームに行って活躍する選手が出たら面白いなと思っています。せっかく行くからには『勉強』に行くのではなく、『勝負』してほしい。みんながもらえるチャンスではありません。行くからには……すぐ帰ってくるのもいいですが、できれば長く活躍して、長谷部(誠)さん、川島永嗣さん、吉田麻也くらい地位を確立してみせてほしいです」
内田が2018年に鹿島に復帰すると、鹿島からは鈴木優磨(シント=トロイデンVV)、安西幸輝(ポルティモネンセSC)、安部裕葵(FCバルセロナB)、そして昌子源(トゥールーズFC→ガンバ大阪)と、一斉に当時の主力組が海外に挑戦の場を求めた。ただ、いずれも欧州主要4大リーグのトップチームではなかった。その時、内田はその傾向について、「経験が必要。そこからステップアップしていけばいい」と語っていた。
が、鈴木がベルギーで突き抜ける気配を見せるものの、まだ後輩から一人も“シャルケレベル”に到達できずにいる。その現状に、少なからず物足りなさも感じているようだった。
もちろん内田は自身がシャルケで主力として5シーズンにわたってプレーできたのは時代や運も関係していたと受け止める。ただ、そんな自分を超えていくには、『勉強』のスタンスでは厳しいのではないかと感じていたようだ。
「バイエルンがCLで優勝しましたが、(準優勝だった)パリ・サンジェルマンにも多くのシャルケで一緒にプレーした選手がいました。バイエルンにもいます。ヨーロッパのある程度のクラブに行ければ、あとは紙一重。今は僕が(CLの)出場時間が一番長いのかな。それもすぐ抜かれると思います。ただ、海外に行きたいのは分かりますが、チームで何か残してから行けばいいのにと思います。それができないならば、移籍金を置いていけばいいと。『海外に行きたいです』と相談に来る選手もいました。ただ、そんなに甘くないぞと。行きたければ、行けます。でもすぐ帰ってくるんだろうなとも思ってしまいます」
新シーズンのCL出場チームでは、リバプールFCの南野拓実、FCポルトの中島翔哉らがいるが、日本人選手は思っているほど欧州で評価されていない。だから、その先入観をぶち壊すような選手が出てほしいというメッセージだった。現在であれば、久保建英(ビジャレアル)や安部がそれが可能な立ち位置にいるだろうか。
せっかく人生一度の勝負なのだから、まずビッグクラブに行くことにトライしてみてはどうかと。そのうえでステップアップの道を選択することになれば、それはそれで現実を受け止められるはず。シャルケに移籍した内田自身が、まさかCLでの日本人最長出場を果たすとは考えてもみなかったのだから――。内田はシャルケで、彼以上に活躍する日本人選手の出現を楽しみにしているようだった。
[取材・文:塚越始]