名古屋対横浜FC、疑惑のシーンは「ハンドが妥当だった」。なぜPK判定は覆った?再開方法は正しい?審判インストラクターが詳しく解説
名古屋のサポーター。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
DAZNの「Jリーグジャッジメント」で。「直観ではハンドのファウル。しかし自分であれば笛を吹けたか分からない」
[J1 32節] 名古屋 0-0 横浜FC/2020年12月12日/パロマ瑞穂スタジアム
名古屋グランパス対横浜FCの一戦、79分に名古屋が田代真一のハンドのファウルでPKを獲得した。が、その後、池内明彦主審が副審と協議をした結果、この判定が覆り、ノーファウルに。横浜FCのGK六反勇治のドロップボールで再開された。
このシーンが、DAZNの人気コンテンツ『Jリーグジャッジメント』で取り上げられた。「ハンドのファウルはあったのか」「なぜ判定は覆ったのか」「再開方法に問題はなかったのか」の3点について、Jリーグの原博実副理事長、タレントの平畠啓史氏をまじえて議論し、元国際審判員で日本サッカー協会(JFA)のS級インストラクターの廣嶋禎数が詳しく解説をした。
問題のシーンはスコアレスで迎えた79分に起きた。ガブルエル・シャビエルがペナルティエリア内に精度の高いキックを放つ。これにジョアン・シミッチがジャンプヘッドでマギーニョに競り勝ち折り返す。そこにいた田代が左腕を体につけていたが、胸とも腕とも言える位置でボールを処理。ボールをコントロールしてクリアした。
そこで主審は笛を吹き、ハンドのファウルを宣告した。すると横浜FCの選手が猛抗議。副審に確認するように促した。そして、主審は副審と話し合い、その結果、ノーファウルと判定を覆したのだ。結局、試合はスコアレスドローに終わった。
まず、ハンドのファウルの有無について。VTRで見る限りは「ハンドのファウルを取られてもおかしくない」という見解が示された。ただし廣嶋氏は「自分であれば笛を吹けたか分からない」と、一瞬で判断するには、かなり微妙で難しいシーンであったことが説明された。
「腕の位置でいうと、彼(田代)は配慮して体にしっかりつけています。そこではハンドにはできません。ただ(シミッチのヘッドは)距離的にあり、ヘディングのボールなので、あそにボールが来ることは分かります。意図があって腕を残していたと判断せざるを得ないと思います」
一方、主審が副審と協議したうえで、判定が覆った。ルールの運用については問題なかったが、主審と副審の関係で言えば、廣嶋氏は「私が副審であった場合、この判断には手を出しませんでした」と説明した。
廣嶋氏は次のように解説した。
「主審は手に当たったという事実を見て笛を吹いています。これがもしも手に当たった事実が見逃され、副審だけが見ていたのであれば、主審に伝えなければいけませんでした」
つまり「主審が持っていない情報(見逃された事象)を、副審が持っていた場合にはサポートする必要がある」ということが前提にあった。一方、審判講習会では「副審が何か持っている情報があれば、それを主審に伝えるようにとも教えています。そのため今回、まず副審が感じたことを伝えられたと思います」という。副審からの情報を得たことで、主審の“確信”が揺らいでしまったということだ。
また、試合は六反のキックで再開された。これはペナルティエリア内でのドロップボールの再開は、すべてゴールキーパーにドロップされる、と協議規則で定められているためだった。こちらもルール運用上は問題なかった。
とはいえ選手たちは混乱を招いていた。
ドロップボールでの再開について、原副理事長は「もちろん全ての競技規則を、選手は分かっていないといけない。ただ選手・スタッフ全員がその細かいところまで理解しているとは言えず、状況的にも熱くなっている」と現場の状況を説明。そのため廣嶋氏は「こうした状況ですと、どちらかの選手がフラストレーションを溜めることになります」として、まず両チームの話のできる選手を呼び、なぜ判定が覆ったかを説明し、ドロップボールで再開されることを説明すべきだったと解説した。
直後にはガブリエル・シャビエルが相手選手を蹴って退場処分になる事案も発生した。そのように選手の動揺を少しでも和らげられれば、もしかすると、その行為も防げたかもしれなかった。
同コンテンツでは今回、モンテディオ山形対ファジアーノ岡山のDOGSOでは? というシーン、またAFCアジアチャンピオンズリーグでのVAR判定を巡る事象についても詳しく議論されている。
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[文:サカノワ編集グループ]