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エントリー問題、Jリーグが担当マッチコミッショナーに無期限で割当停止の処分。JFAは浦和の不服申立を却下

写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

つまり整理すると…。

 Jリーグは8月12日、18節の浦和レッズ対湘南ベルマーレ戦で、規定運営の行き違いによりエントリー資格のない選手が出場していた問題について(浦和の0-3敗戦扱い)、この試合で担当していたマッチコミッショナーを無期限で割当から外す処分を下すと発表した。しかし一方、浦和が日本サッカー協会(JFA)の不服申立委員会に行ったこの件に関する不服申立は、7月28日に却下されたことも報告している。

 今回、外部有識者による客観的な評価を踏まえ、マッチコミッショナーだった髙林敏夫に対し、「マッチコミッショナーとしての担当試合の割当を、期限を定めず停止する処分を決定しました」と発表している。

 発表の中でJリーグは規定や民法をもとに、詳しく説明している。できるだけ分かりやすくまとめたい。

 リーグはマッチコミッショナーのためのガイドラインを策定している。その事項のうち、このコロナ禍では、「マッチコミッショナーは、クラブ運営担当より『メンバー提出用紙』と『検査結果(エントリー可能者リスト)』を受け取り、新型コロナウイルス感染症に関する公式検査において陰性判定を得ているもしくはエントリー資格認定委員会にエントリー可と判断された者がエントリーされていることをチェックする」との取り決めがある。

 しかし、「ここで十分な確認を怠り、結果としてエントリー無資格者が試合出場する結果を引き起こした」として、今回の処分を決定したということだ。

 一方、「かかる責任はエントリー資格の有無を確認する点に限られ、エントリー無資格者がエントリーしたことについての結果責任を負うものではありません」とも説明されている。

 つまり、資格のなかった選手をエントリーさせた。その浦和のミスに対する責任は変わらない、ということ。

 Jリーグは次のように説明している。

「確かにマッチコミッショナーがエントリー無資格者を検出できれば、事実上クラブはエントリー無資格者をエントリーするという違反行為を回避できることとなることから、マッチコミッショナーの果たすべき役割は大きいといえます。 しかし、エントリー資格を有する者をエントリーする義務は各クラブの固有の義務」

 リーグとしては「エントリー無資格者がエントリーしたことは、クラブの義務違反であり、その責任はクラブが負うべきもの」というスタンスである。

 上記事項がガイドラインにも記されており、「エントリー無資格者がエントリーした事態について、クラブとマッチコミッショナーが、それぞれの義務の範囲内で責任を負うこととなる」と、マッチコミッショナーへの処分も追加された。

 Jリーグは、なぜ、このような複雑な制度設計になったかを説明する。

 コロナ禍で公式戦再開に向けたルール設定を議論するなか、「厳格なルールに基づかなければ試合再開は困難である」との専門家の助言のもとルールを設計。そこで「指定する公式検査を受検しなければエントリーを一切認めない」ことを原則とした。

 検査には様々な種類がある 一方、やむを得ず公式検査を受けられなかった選手が試合に出場できなくなってしまう不都合が解消するため、「エントリー資格認定委員会」の設置を決めた。そして公式検査以外の検査結果の妥当性を担保する手続きを設定し(今回であればJFA主管の検査)、公式検査未受検であっても例外的にエントリーを可能とする設計とした。

 またJリーグも「クラブ運営上の大きな負担になっている」ことを認めつつも、「実行委員会・理事会での審議決議を経て適切に決定されたルールである」とも指摘する。

 そのためリーグは「ルールそのものは最大限尊重されるべきものと考えております」「結果として今回のようなエントリー無資格者の試合出場という事態が生じてしまったことは誠に遺憾です」と強調している。

 そして、あくまでも今回の事案は、JFA懲罰規程の定める「競技および競技会に関する違反行為」に該当。懲罰決定には、チェアマンらJリーグからは一切介入しておらず、JFAから委任を受けた委員により懲罰は決定したことも説明している。

 今後について、マッチコミッショナーに対し、研修の実施、「エントリー可能者リスト」が試合日を含んでいるのかを必ず確認することの徹底、また、中長期的には制度の抜本的な見直しとヒューマンエラーが発生しにくい仕組みの構築の検討を進める。

 また、浦和から今回の規程や懲罰決定までのプロセスの不備、リーグのスタンスなどについての意見書が提出されたが、Jリーグは「7月21日に当法人より浦和レッズへ回答書を送付しております」とも伝えている。

※この問題の「論点」について、明日レポートを掲載します。

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[文:サカノワ編集グループ]