【指導者の視点】柴崎岳と遠藤航の危機察知力が中国の反撃を無効化させた
柴崎岳。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
柴崎が数的優位を作り、遠藤が2トップのマークを外して。
[W杯 アジア最終予選] 中国 0–1 日本/2021年9月7日18:00(日本時間8日0:00)/ハリーファ国際スタジアム(カタール・ドーハ)
日本代表は中国代表戦の後半途中、ゴールを奪おうと選手交代から積極性を高めた中国の勢いをいなすことで勝利に近づけていった。相手の意図を把握し、冷静かつ的確に対応したのが柴崎岳と遠藤航の2ボランチだった。二人の絶妙だったポジショニングの変化に着目した。
◎プレッシングを無効化させたポジショニング
中国は60分過ぎ、極端に自陣に偏った5-3-2から「3枚替え」により反撃を試みた。システムチェンジによって変化を付けるのは、当初からのプランだったのだろう。
中国は攻撃的な選手3人をピッチに送り込み(8番・ハオ・ジュンミン、11番・アラン、21番・アロイージオ)、システムは4-4-2に変更。連敗阻止へ1点を奪いに来た。
布陣と戦術の変更により、大きく変わったのが中国のプレッシングだった。自陣に引き込んでいた守備から、日本陣内までボールを奪いにくるシーンが増えた。
前半から、プレッシャーのない試合をしていた日本の選手たちは少なからず受け身になり、ボールロストが増え、自陣まで攻め込まれる回数も増えた。
そこで、日本に落ち着きをもたらしたのが、柴崎岳、遠藤航の2ボランチだった。
4-4-2のハイプレスを受けると、日本の4バックは相手とはっきりマッチアップする構図になる。その強度が増すと、スペースと時間が奪われ、ボール保持が難しくなる。
この相手の変化にすぐ気付いた柴崎は、ボールを保持してゲームを落ち着かせるため、センターバックの間に落ち、3バック化して相手の様子を伺った。
遠藤はその柴崎に呼応。相手2トップのちょうど間の背中(視野に入り位置)に立ち、二人の動きをロック。一方の中国の2トップは遠藤のパスコースをケアしなければならず、自分のマーク(日本のセンターバック)へプレッシングに行きにくくなった。
ディフェンスラインの数的優位、2トップをロックする――。この二人の判断で、ビルドアップに時間とスペースをもたらし、再び日本が主導権(ボール)を握ることに成功した。
柴崎は室屋成が高い位置をとって空いたスペースにもポジショニングを取りながら、ビルドアップをより安定させ、試合終盤までゲームをコントロールし続けた。
スコアは動かぬまま、日本が1-0で勝利。相手の変化にすぐさま2ボランチが対応したことで、中国にはその対応策を見出す時間も限られ、日本の勝利への確率は高まっていた。
10月にはB組最大のライバルであるサウジアラビア、オーストラリアとの連戦が組まれている。この中国戦のように、より優位となるポジショニングをとってゲームをコントロールできるかが一つポイントになり、そこから勝利を掴むことを期待したい。
◎プロフィール/佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ、広島県出身。 広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。 広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史氏から「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。 現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。
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[文:サカノワ編集グループ]