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大谷翔平問題、日本のスポーツベッティング“解禁論”に待った。Jリーグなど国内サッカー界にも影響

ドジャースの大谷翔平。 (Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)

オンラインに“消える多額の富”。アメリカではカジノ業界と政治の癒着が進み、若者中心に社会問題化。

 大谷翔平の口座から違法なブックメーカーに約6.8億円の振り込みがあり、それに関与したとして通訳だった水原一平氏が米国MLBロサンゼルス・ドジャースを解任された件は、アメリカで様々な物議を醸し出している。一方、日本国内でもスポーツベッティングの解禁が近づいていると言われてきたなか、今回を機にアメリカで起きている諸問題も表面化。国内の”スポーツベット規制緩和”が再び遠のく要因の一つにもなってきそうだ。

 アメリカの『ポリティコ』は今回の件について、「大規模な野球の賭博スキャンダル。スポーツベッティングはすでに爆発的に拡大しているが、議会はこの問題をもはや無視できない」として、大谷や水原氏を批評するのではなく、米国の抱える問題についてレポートしている。

 スポーツベッティングは、例えば「勝者」、「スコア」から、「誰が次のゴールを決めるか」、「誰がホームランを打つか」、「どちらが先制するか」、「〇〇がゴールを決めるか」、「〇〇は何本ヒットを打つか」といった“ポピュラー”なテーマに、スマートフォンやパソコンから気軽にベットできる。totoや宝くじはもちろん、公営ギャンブルと比較して、還元率も比較的高いとされる。加えて、ライブでできるため高い高揚感を得られる。その入口の”入りやすさ”が、特に30代より若い世代でハマる人間を増やしているというのだ。

 同メディアによると、NCAA(全米大学体育協会)の調査では、男子学生の3分の1が少なくとも月に数回スポーツベッティングで賭けているという結果が得られたそうだ。全回答者のうち60パーセントが試合中のライブで賭けを楽しんだ経験があるという。

 急激に利用者も増え、昨年の米国の総売上は18兆円と言われるなか、社会問題も内在している。しかしカジノ業界からは多額の寄付や献金がアメリカの政治団体に入っていて、「議論の対象」となることを避け続けていると指摘している。

 最高裁判所の判決を受けて最初にギャンブルが合法化された一つであるニュージャージー州では、オンラインカジノの依存症にある人が6年前から3倍に増加したそうだ。専門化の「ギャンブルが美化されすぎている」と危惧するコメントも掲載されている。

 つまり今回、果たして水原氏の自白が正しければ、「ギャンブル依存症」が生まれる社会的背景があったとも言える。であれば、その予備軍はごまんといることになる。米国ではスポーツ賭博が若者の貧困化と軽犯罪率の増加に関係していると言われ、それは決して日本でも他人事ではない。

 しかも20代・30代の若い人達ほど没入する傾向が高い点も問題視されている。そして多額の富が、オンラインの世界で消えている。ゲーム感覚でできて、財産を失うこともあり得る。気付かぬうちに国際的なマネーロンダリングに加担する危険も伴う。そういった背景もあって、米国38州では合法化されるなか、カリフォルニア州では、スポーツベッティングは違法のままになっている。

 確かに数百円だとしても、目の前の次の展開に、手元の簡単な操作で何か賭けたうえでスポーツ観戦できるとなれば、高揚感は一段と高まる。その額が増えれば、よりハラハラする気持ちも強まる。が、スポーツ本来の楽しみ方が損なわれていくのは確実だ。

 一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは昨年3月、「スポーツベッティング市場の勃興と参入方法に関する考察」と題したレポートを発行。賭けによって儲けを増やす”賭博”の意味合いより、その資金流入によるスポーツ界発展の意味合いが強いと主張している。

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 日本でもスポーツベッティングの合法化が近いのではないかと噂されてきた。しかし、この大谷と水原氏の問題が解明され、そこから生じる社会的な問題点について議論されるまで……日本での実現はまだ先になっていくかもしれない。今回のスーパースターを巻き込んだスキャンダルは、様々な法規制や社会問題への対策も必要だと分かり、その資金還元も期待されるJリーグなど国内サッカー界にも影響が及ぶことになりそうだ。

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