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「満員のスタジアム」今季中の実証検証目指す。NPB・Jリーグ新型コロナ対策会議で専門家が提言

NPBの斉藤惇コミッショナー(左)と Jリーグの村井満チェアマン(右)(2020年3月撮影)。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

「通常の応援スタイル」にも言及。ただし慎重論も――。

 NPB(プロ野球)とJリーグ合同による第40回新型コロナウイルス対策連絡会議が10月4日に行われた。第5波を乗り越えワクチン接種が進み、治療法の選択肢も増えつつあるなかで、今後は「満員のスタジアム」による実証検証を目指すことを申し合わせた。

 会議のあとNPBの斉藤惇コミッショナー、Jリーグの村井満チェアマン、専門家チームの賀来満夫氏(東北医科薬科大医学部)、三鴨廣繁氏(愛知医科大大学院)、舘田一博氏(東邦大医学部)がオンラインで合同記者会見を開いた。

 今回はワクチンの2回接種済証や陰性証明を組み合わせる「ワクチン・検査パッケージ」の実施について具体的に話し合われたという。

 その中で東京オリンピック・パラリンピックの感染症対策にも携わった三鴨氏は、これまでのNPBとJリーグの実績を踏まえ、今年中にも満員あるいはそれに近い形で実証検証(実験)を行い、来シーズンに備えるべきではないかと持論を語った。

「現在のような(観客席の)一つ置きの市松模様ではなく、満員でスポーツイベントが正常に行われていく『withコロナ時代』に入っていくべきだという、その活動に向けた一歩を踏み出した会議だったと認識しています。これまでの、抑制する、足踏みする、という意味ではなく、前向きな議論ができました。多くの方々もそう感じていると思いました」

 そして東京オリンピック・パラリンピックには、この会議の情報・データも活用されたという。今後は通常の社会生活(マスギャザリング)に向け、「NPBとJリーグの試みが日本社会を動かしていく原動力になれればと切に願っています」と語った。

 そのうえで満員のスタジアムによる実証検証を目指すべきではないかと私見を語った。

「(今後について)NPBもJリーグもおそらく実証実験を重ね、できるだけ満員に近づけて、その結果を見て検討していくしかないと見ています。(満員でのコンスタントの開催は)スポーツイベントでは(早くても)来シーズンになってしまうのではないかと思いますが、私はこれからは、感染症対策を遵守していただいたうえで、満員に入れた時のデータ、満員に近いデータをもとに、通常の観戦ができることが理想だと思っています。おそらく、そうすべきだと思っています」

「私は実証結果を経て、お客さんを全部入れていっていいのではないかと、極論ですが思っています」 

 すでに海外では満員に近い形での大規模イベント開催の事例も報告されている。もちろん日本はまた状況が異なるものの、これまでNPB、Jリーグともに会場でのクラスター発生は報告されておらず、大きな波を乗りえた先へ向かうため、同氏は「満員」あるいは「満員に近い形」での開催を提案していた。

 一方、賀久氏は具体的な段階を踏むべきではないかと、やや慎重論を唱えた。

 日本では現在、成年のワクチン2回接種率が約60パーセントまで進み、さらに上昇傾向にある。一方、イスラエルで約60パーセントの接種率を達成した1か月後に、感染者が急増した事例を紹介。

 理想はワクチン接種率80パーセント以上、可能であれば90パーセント近く。一方「抗体カクテルの高い有効性も認められ、さらに抗体療法の点滴も間もなく軽症の時に受けられるようになりそうだ」として、次のような条件を目安の一つに挙げた。

「・ワクチン接種率が上がること ・点滴など治療を多くの方がスムーズに受けられる状況 ・飲み薬の普及 この3つが加わってくると、ほとんど満員でも重症化する方が少なく、医療を逼迫しなくなる目安になるのではないかと思っています」

 また、本来の「応援スタイル」で実証検証を実施していくことにも言及。ただし、社会全体の状況を踏まえる大切さも強調した。

「(声を出しての応援は)社会全体の中の感染状況が反映されることであり、例えば大規模イベントは応援していいんだ、しかし飲食店では黙食やマスク着用が不可欠になるなどチグハグなことが起きてはいけません。社会の感染症対策の一環として、プロ野球とJリーグも捉えていくことだと思います。段階的にしっかり見ながらやっていく。マスギャザリングで人が集まればリスクは高まりますので、そこはしっかり見ていく必要があると思います」

 また舘田氏は、希望するワクチン接種者が全て受けること、そして飲み薬の普及により「見える景色が変わってくるはずです」と後押しをした。

「そうすれば、インフルエンザのように対応できるのではないか、2類から5類への変更も議論されるはずです。一人ひとりがリスクを認識し、それを避けることも考え、100パーセントの観客を入れることも可能ではないかと思います」

 そのように三者それぞれの意見が出された。その議論からも、選手に声援を送る風景の輪郭は浮かんできた。

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[文:サカノワ編集グループ]

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