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【指導者の視点】鹿島×川崎、「パスの角度」が生んだアントラーズ二つの表情

樋口雄太らが“前向き”になれたことで、鹿島が川崎との後半、攻勢に立てた(写真はいばらきサッカーフェスティバルより)。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

三竿と中村投入、中盤ダイヤモンド型への変更で――。

 2月26日にカシマスタジアムで行われたJ1リーグ2節、鹿島アントラーズ対川崎フロンターレの注目の一戦は、前半に2点先取した川崎がそのまま逃げ切り(〇2-0)勝利を収めた。そしてホームの鹿島はこの試合、劣勢の前半、攻勢に立った後半と、二つの全く異なる表情を見せた。前半に上手くいかなかったポイント、そこからどのように修正していったのかを紐解きたい。

 前半のほとんどの時間、鹿島が上手く機能しなかった理由に、攻守ともにポジショニングが定まらなかった点が挙げられる。

 特に気になったのが、センターバックとボランチのパス交換の角度の悪さだ。なおかつ距離が近く、相手のギャップを突くような効果的なパスを放てなかった。

 一般的には、パスは角度がある(ななめのパス)ほうが良いとされる。それは受け手が前を向きやすい態勢を作れたり、「トライアングル」や「ダイアモンド」などの関係性を作りやすくなれたり、単純にその角度により「選択肢」を多く作り出せるからだ。

 しかし、関川郁万と樋口雄太、キム・ミンテとディエゴ・ピトゥカのパスはほとんど角度がなかった。そのため受け手のボランチは後ろ向きになるプレーがほとんどだった(背中からプレッシャーを受け、前を向くけない)。加えてその距離も短く、川崎の選手たちは大きくポジションを動かさず、ストレスなく思い切ったプレッシングをしていた。

 すると後半、2点を取りに行く必要のある鹿島は三竿健斗、中村亮太朗を投入。中盤をダイヤモンド型に変更した。

 この修正が、前半になかった安定を鹿島にもたらした。中盤をダイヤモンド型にした主な狙いは、川崎の中盤の選手に対するマークを明確にし、プレッシングの効果的を高めることだったと思うが、それが攻撃にも良い影響を与えた。

「ダイヤモンドの頂点」となるアンカーポジションができて、前半にはなかった角度のあるパス交換が増えた。中村、ピトゥカ、樋口が前向きでプレーし続け、王者の川崎相手に圧力を与え続けた。

 これに対し川崎もシステムを噛み合わせて修正してくる――。それでも“前向き”になった鹿島はスムーズにボールを前進させて決定機を作り出していった。結果的に得点できなかったものの、とても可能性を感じさせる内容だった。

 前半のビハインドが響き試合には敗れた鹿島だが、今後へ期待を抱かせた後半だった。その45分間に見せたような内容が決して偶然ではなく、1試合通して発揮できるのか。若さと躍動感、そして可能性の溢れる鹿島のこれからに注目していきたい。

【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。

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[文:サカノワ編集グループ]

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