「4年後、見ていて下さい」天野純がデゲネク弾に込めた想いと”22年W杯”
横浜F・マリノスの天野純(1月の天皇杯決勝より) 写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
ロシアに挑む豪州代表の同僚に餞のアシスト。二人の阿吽の呼吸を「武器にしていきたい」。
[J1 15節] 横浜FM 5-2 長崎/2018年5月19日/日産スタジアム
横浜F・マリノスのMF天野純が19日のV・ファーレン長崎戦で、FIFAワールドカップ・ロシア大会に臨むオーストラリア代表候補に選ばれたDFミロシュ・デゲネクへの餞(はなむけ)となる絶好アシストを”プレゼント”した。
ホームチームが4-2とリードして迎えた82分、コーナーキックのチャンスを掴む。多くのサポーターが埋めたゴール前、追加点を欲する期待のムードが高まるなか、この舞台に持ってこいの最高と言えるゴールが決まる。
天野はそのシーンを振り返る。
「試合前にどこに誰が入るかを話し合っていて、そこに上手く落とすことができました。『(狙いは)ファーだ』と思っていたところへ、ミロシュが感じ取って入ってきてくれたんです。二人のイメージが合致した1点。これが武器になっていけたらいいですね」
天野の左足から放れたボールが美しい放物線を描く。相手DFに競り勝った背番号2のジャンプヘッドの一撃がゴールネットを突き刺す。それは決して偶然ではなく、二人の気持ちが線となってつながって生まれた。天野とデゲネクの阿吽の呼吸がもたらした、今季最多となるチーム5点目のゴールだった。
デゲネクは試合直後、オーストラリア代表の直前合宿に向かうため離日した。26人から本登録の23人に絞り込まれるが、「いい気分で、自信を持っていけるよ」と景気づけの一発と大勝を喜んでいた。
そして天野もデゲネクには横浜FMの代表として期待を寄せる。
「ワールドカップに出場できるのはF・マリノスからはミロシュだけなので、やはりワールドカップの舞台に立つ姿を見たい。そこでの経験をF・マリノスに還元してくれれば、もっと、もっといいチームになっていけると思いますので、楽しみにしています」
デゲネクが横浜FM、そしてJリーグの代表として、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。まずは出場機会を掴んでもらいたいところ。
一方、天野は西野朗監督が就任した新生・日本代表のメンバーに選出されなかった。日本人選手の武器の一つに、精度の高いセットプレーからの得点が挙げられる。天野はその左足から、この日のCKからのアシストに加え、最近は直接FKで圧巻の2ゴールを決めていた。
もしかすると、ひょっとすると、「(記者)個人的には天野選手の代表抜擢もあるかな、と期待していたのですが……」と、本人に伝えた。
すると天野は嬉しそうに言った。
「4年後、見ていてくださいよ」
おそらく、そういった声はすでにたくさん聞いていたのだろう。少なからず悔しさもあるに違いない。と同時に、アンジェ・ポステコグルー監督のもと、自身の進化を感じ取れているからこその一言。2018年の戦いが今から開幕を迎える。一方では、2022年のカタール大会に向けて――。
天野が「日の丸」を目指す挑戦もまた、新たに始まる。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI