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声出し応援に向けた「出口戦略」見えず。野々村新チェアマンは重要課題に挙げる。NPB・Jリーグ新型コロナウイルス対策連絡会議

昨年12月に国立で開催された天皇杯決勝・浦和対大分はほぼ満員で開催された。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

エビデンスの収集を進めるというが、現実的には――。

「第51回 NPB・Jリーグ新型コロナウイルス対策連絡会議」が3月22日に行われ、まん延防止等重点措置など全面解除とともにプロ野球が開幕を迎えることを受けて、改めて今後の課題などが話し合われた。会議のあと、NPBの斉藤惇コミッショナー、Jリーグの野々村芳和チェアマン、専門家チームの賀来満夫氏(東北医科薬科大医学部)(三鴨廣繁氏/愛知医科大大学院、舘田一博氏/東邦大医学部は欠席)によるオンラインの合同記者会見が行われた。

 政府はまん防解除後について、「一般的な職場では濃厚接触者の特定や一律の出勤制限はしないこと」を方針に盛り込んだ。しかし競技性・団体行動の多さなどを踏まえ、Jリーグ、プロ野球ともに独自の濃厚接触者の判断基準を設け、今後も感染者や陽性者が出た場合には、各クラブにより特定を行うことで申し合わせた。

 また今回初めて会議に臨んだ野々村新チェアマンは冒頭のあいさつの中で、「気の早い話かもしれませんが、次のフェーズとして、応援スタイルの見直しについて、リーグでエビデンスを取ることを含め、先生たちの意見を聞きながら考えていきたいということを話させていただきました」と報告した。

 その「声出し応援」について改めて質問を受けた野々村チェアマンは、次のように思いを語った。

「見通しはまったく経っていません。これは周りの判断がないと前に進んでいきませんが、どのような準備をして、どのようなエビデンスがあれば、コロナ禍前のように元に戻るのか。それはサッカーを成立させるために重要であり、データを蓄積していく準備はしていきたいです。どのようなエビデンスがあればいいのか。勉強させてもらいながら、なるべく早くそうなるようにしたいというのが現状です」

 また、賀来氏は次のように説明した。

「オミクロンを含めコロナウイルスは口腔内に増えるので、大きな声を出すことで伝播しやすい状況になっているのは事実です。しっかりマスクをつければどれぐらいの漏れ率かはスーパーコンピューター富岳などで少しずつデータが出てきています。諸外国と考え方が異なるところはありますが、やはり(日本でも)大きな声を出して選手を鼓舞してほしいと思います。エビデンスを参考にしながら、より声を出していける体制にもっていければと思います」

 また、21日以降のJリーグの観客数も制限なしになるが、チケットの売れ行きは芳しくない。その指摘を受けて、野々村チェアマンは次のようにも語った。

「スタジアムの中の空気感が戻るかどうかでお客さんの入りがだいぶ変わってくるだろうとは思っています。サッカーという『作品』という言葉を使わせてもらっていますが、やはりサポーターの熱量が音として伝わってくるかは大切であり、完成すべき『作品』が途中の段階だとすれば、それを見に来るファンが二の足を踏む、『行きたい』とスタジアムにあと一歩向かない理由かなとは思っています」

 もちろん「声出し応援」が認められれば、戻ってくる観客もいる一方、逆に大人数の集まるスタジアムへ行くことを避ける人も出てきかねない。そのあたりもまた読めないところではある。

 Jリーグとしてのエビデンスの蓄積は大切になる。一方、「社会の中でのサッカー」もまた課題で、Jリーグのスタジアムのみ大声の応援が認められる、という状況は日本では難しい面がある。つまり学校の行事などで合唱もできないのに、「なぜサッカーは大声で応援ができるのか」という声に対し、どのように応えるかだ。

 Jリーグが主導し「声出し」のデータを示すのは有効な手段の一つになる。とはいえ村井満前チェアマン体制下では“声は出せないが入場制限なしにすること”を優先し目指してきた。1万人収容時、一席空きなどでの「声出し応援」のデータがなく、声を出すために、人数制限をあえて実施するのか? という議論も出てくる。

 現状の空席の多いスタジアムであれば、そうした実証も現実的には可能だと言える。しかしそうすると、今度は「社会の目」とどのように向き合うのか、その問題も残ったままだ。そう考えると、なかなか「出口戦略」が見えてこない。

 これまでも結果的には、政府の規制緩和に応じて、Jリーグの観客動員の体制も変更されてきた。野々村チェアマンが就任時から指摘する、熱量の欠けたスタジアムは、それでも耐えてきた人たちも次第にスタジアムから離れてきていて、深刻な問題なのかもしれない。ただ、現実的にはサッカーよりも社会性が高く重要な学校などでの距離を開けての合唱など(※1 文科省は地域に判断を委ねている)――このあたりがもう少し認められていかないと、Jリーグの「声出し応援」ができる日はまだ先か。

※1)文科省の公式サイトより
文部科学省では、これまでも学校の新型コロナウイルス感染症の対応についてまとめたマニュアルにおいて、各教科において、近距離での大声や呼気、接触等を伴う感染リスクの高い学習活動については、地域の感染レベルが高い場合は控える旨を示してまいりました。

 2月4日に文部科学省から示した対応は、こうした近距離などで行われる感染リスクの高い学習活動について、オミクロン株による感染が子供の間にも急速に拡大している現在の状況では、一時的に控えるという趣旨です。また、各学校において、これまでも、十分な距離をとり、方法等を工夫するなどにより感染リスクを低減し実施している活動について、一律に控えることを求めるものではありません。

▼特にリスクの高い活動の例
· 各教科等に共通する活動として「児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワーク等」及び「近距離で一斉に大きな声で話す活動」
· 音楽における「室内で児童生徒が近距離で行う合唱及びリコーダーや鍵盤ハーモニカ等の管楽器演奏」
· 家庭、技術・家庭における「児童生徒同士が近距離で活動する調理実習」
· 体育、保健体育における「児童生徒が密集する運動」や「近距離で組み合ったり接触したりする運動」

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