それでも3バックはW杯の選択肢に加えたい。長谷部がフランクフルトで示した強者に勝つ条件
日本代表の長谷部誠 写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
「ここで生きる部分はある」。日本代表がロシアで勝点3を掴むことを考えると、オプションはほしい。
[FIFA ロシアW杯] 日本 – コロンビア/2018年6月19日21時(日本時間)/サランスク
日本代表MF長谷部誠が所属するブンデスリーガ1部のアイントラハト・フランクフルトは、3バックと4バックを使い分けて、一時期は2位まで躍進。結局、リーグ戦は8位でシーズンを終えたが、30年ぶりとなるドイツカップ(DFBポカール)制覇を達成。ニコ・コバチ監督は来季、リーグ6連覇中のバイエルン・ミュンヘンで指揮を執ることになった。
長谷部はそのフランクフルトで、ボランチ、アンカー、リベロ、右ストッパーと複数のポジションでプレー。ときにゲームキャプテンとしてピッチ上の指揮官役を担い、コバチ監督の意図するスタイルの具現化に努めた。
日本代表の西野監督は3バックの採用について、ハリルホジッチ前体制下ではどんな相手でも、どんな状況下でも4-2-3-1の“一択”しかなかったため、戦いの幅を広めるためにも「ベースはある。オプションが必要」と考え、3バックに着手したと説明していた。
パラグアイ戦で4ゴールを奪うなど高いパフォーマンスを示したことで、4-2-3-1があくまでメインであり、その戦術を深めることが優先されるべきであることは確かだ。
ただ、確かにクラブチームと代表チームの違いはあれど、2部降格の可能性すらあったフランクフルトにタイトルをもたらした、ニコ・コバチ流のシステム可変は参考にできる。強者に挑むためのスタンス――DFB決勝は、バイエルンに3-1で勝っている。しかもその中心人物が長谷部だったのだから、複数システムを活用できるのであれば、選択肢には加えたいところ。もちろん、そんなオプションにかける時間があるのかどうか、そこもまた課題ではあるが。
3バックが採用されたガーナ戦のあと、長谷部はこんなことを語っていた。
「(ガーナ戦の)前半、後ろに人数があまりすぎていた。試合のなかで、CBが前に出て、それによってサイド、中盤と押し出せた。3バックのやり方にもいろいろあり、所属クラブによっても異なる。それを実際に、ゲームをやるなかで合わせていけました」
敗れたとはいえ、長谷部は3-4-2-1に小さくない手応えを得ていた。「敗れたとはいえ、決して劣勢を強いられたわけではなかった」と何度も言っていた。
そして、フランクフルトの戦い方を日本代表にも還元できるのでは? そう質問すると長谷部は、次のように答えた。
「リードをされてから、チームの重心が前へ行くのでは遅い。加えて、スコアレスやリードしたときで、戦い方も変わってくる。いろんな想定をしながらフランクフルトでもやってきた。そのことがここ(代表)に生きる部分もあると思います。そこは、もっともっと還元してやっていきたい」
長谷部は不出場だったが、パラグアイ戦では前から積極的に向かう守備がハマった。それは、4バックでも、3バックでも、日本のスタイルとして重視すべき点として明白になった。
3バックに取り組んだことで、4-2-3-1の特長もより把握できた点もあったようだ。
親善試合のパラグアイ戦は最後まで押し切って勝利を収めた。ただW杯本番では、例えば……サイドの攻防で数的有利を作りたい、強力なサイドアタッカーへの対策、リベロの一人を余らせてでも勝利を掴みにいく――。おそらく、勝点3を掴もうとするとき、3バックは確かに有効な手立てになり得る(そこで後傾になれば、逆に攻め込まれるリスクもあるが……)。
フランクフルトが絶対王者バイエルンを倒してタイトルを掴んだ、その長谷部の経験もW杯のここぞという勝負どころで必要とされるはずだ。決して3バックを諦めるわけではなく、状況に応じて選択できる準備を進めながら、ロシアでの戦いに挑みたい。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI