【Jリーグ】今季入場者数、J1・J2は62%から伸び悩む。夏の招待施策の狙いとは?
パリ・サンジェルマンのジャパンツアーは大盛況。川崎戦は新・国立競技場の最多入場者数を更新した。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
“カムバック”層&“行ってみたい新規”層をターゲット、「バラマキではなく、キッカケを作ってもらうための投資」。
Jリーグは7月28日に全57クラブの2021年度(2021シーズン)経営情報完全版を発表したが、その席で、現在展開されている「招待キャンペーン」をはじめとした観客をスタジアムに呼び戻す取り組みについての説明も行われた。
Jリーグマーケティング部によると、全カテゴリー平均での同日までの今季入場者数は、2019年と比べると68%。J1・J2では62%にとどまっている。春先から少しずつ上がってきていたものの、6月以降「62%」から伸びていないということだ。
そうしたなか、マーケティング施策として、新型コロナウイルスの影響で一度離れた客層を呼び戻そうと、ターゲットを明確にしたうえで戦略を実施。関心度合による9つの層を区分けし、「離反層」19・4%の中でも「関心が高い」層7.1%、「Jリーグを認知しているがスタジアムに行ったことがない層」52%の中で「機会がほしい」6.4%、と、この「7.1%」「6.4%」の層にアプローチする戦略を立てて、スタジアムにカムバックしてもらうための“空気づくり”を作り出すとともに、リーグとしてテレビのCMにも初めてチャレンジした。
ゴールデンウィークはテストマーケティング的に関東・静岡・福岡のエリア限定で、テレビCMを中心とした2万4000人の招待施策を実施。その経験を生かし、現在の夏休みは全国8万人に拡大して実施している。JリーグIDをベースに、クラブとリーグの統合マーケティングとして取り組んでいるそうだ。
全国29エリアに分けて、それぞれクラブと協力してテレビCMも作成したという。夏休み期の募集は2週間が経ち、約14万件の応募があった。そのうち全体の4~5割が“カムバック”層、“新規”が約3割を掴めるのではないかとリーグは見ている。
質疑ではそうした無料チケットのバラマキについて賛否の意見があったのではないか? という質問も出た。担当者は次のように強調した。
「バラマキではなく、新しいお客様を獲得するための投資と、クラブ、リーグの共通認識で施策を打っています。一度来ていただくキッカケは招待かもしれませんが、そこから二回目以降、優待あるいはチケットを買っていただくお客様を育てていく、増やしていくかが課題であります。そういった型みたいなものが共通施策としてあります。そこを理解いただいたうえで、リーグ、クラブ全体での取り組みをしています」
もちろん、何よりキッカケは重要だ。それだけに単純に招待策を否定する必要もないかもしれない。
ただし、まだ「声出し応援」ができていないなかでキャンペーンを実施することが本当に得策なのか。そのあたりクラブと連携は取れているのか。
再びコロナ感染者数が増加するなか、少なからずどこか緊張した状態でスタジアムに向かうことも、果たして“次”につながるのか。
何より、こうしたマーケティングをもリーグ主導となることで、それぞれのクラブの施策が弱まるのではないか。
そしてプロ野球の様々な招待(優待)と異なり、Jリーグでは、こうした大規模な無料キャンペーンでは比較的カテゴリーの低い席種が割り当てられることが多いと聞く。もちろん有料観客との関係を考えればそれが妥当と言えるが、ピッチから遠く離れた比較的空席のある場所での観戦など、下手をすると「つまらない」と感じてしまうなど逆効果にもなりかねない。
そういった様々な検証が重要になりそうだ。
[取材・文:塚越始]
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