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【指導者の視点】前田大然がもたらした効果。W杯仕様の“良い守備から攻撃へ”基軸になる日本代表のアメリカ戦勝利

前田大然。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

前線からの守備が機能した回数多く、ショートカウンターにつなげる。

[キリンチャレンジカップ] 日本代表 2–0 アメリカ代表/2022年9月23日14:25(日本時間21:25)/エスプリ・アレーナ(ドイツ)

 日本代表が鎌田大地、三笘薫のゴールで2-0の勝利を収めたアメリカ代表戦、森保一監督が重視したのは――2か月後のカタール・ワールドカップ(W杯)本番を想定した、まず守備に軸を置いた布陣、戦術の構築だった。

 W杯アジア最終予選の途中から日本代表は4-3-3を採用し、本大会出場を勝ち取った。対戦相手との力関係から主導権を握れるため、より高い位置で効率よくポジショニングを取れて、ボール保持を得意とする選手を中盤に1枚多く配置し、試合をコントロールすることが功を奏した。

 とはいえW杯のグループステージの対戦相手は、ドイツ、コスタリカ、スペイン。日本がアジア予選のようにボールを保持し、主導権を握る時間は少なくなる。森保監督は改めて良い守備を構築し、そこから良い攻撃をしていくと強調している。今度は数少ないチャンスを得点につなげる攻防になる。

 この点を踏まえてアメリカ戦を観ると、前線からの守備が機能した回数は多く、そこからショートカウンターを発動させ決定機も作れた。

 前線からの守備を機能させた要因として、センターフォワードで先発起用された前田大然の存在が非常に大きかった。4-2-3-1(守備時は4-4-2)のシステムで、3ラインがコンパクトに保たれ、一人ひとりのポジショニングも良かった。

 前提としてファーストディフェンダーがボールホルダーにしっかりプレッシャーをかけ、パスコースを限定する必要がある。限定がかかれば周りの選手は予測が立てられ、自分のマークや次のパスコースに早く動き、ボールを奪う確率が上がる。前田は持ち味のスピードを生かして他の選手よりも早く相手に寄せて、効果的にプレッシャーをかけていた。その結果、日本は高い位置でボールを奪い、ショートカウンターを繰り出せていた。 

 もちろん、アメリカの出来が良かったとは言えず、決してポゼッションスタイルでなかったことも考慮したい。相手のレベルが高くなると「ポジショニングが良い」だけではボールを奪えなくなる。ただ、W杯本大会では、今回の守備が前提になる。森保監督は一つ選択肢を見出せたと言える。

【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。

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