【プロサッカー選手会】「ABC契約」見直しへJリーグ、JFAと協議へ。吉田麻也会長「時代にそぐわない」
吉田麻也会長(中央)をはじめ、日本プロサッカー選手会の役員。(C)SAKANOWA
「Jリーグのどのチームも選手を獲得できない状況も起こり得る」
一般財団法人 日本プロサッカー選手会(JPFA)の定時総会が6月26日に開かれ、有吉佐織(大宮アルディージャVENTUS)、日高慶太(FC大阪)が新役員に就任した。女子選手の役員選出はJPFA設立以来初めて。
今回の主な議題の一つとして「ABC契約」が取り上げられた。Jリーグ発足から30年、これまで全国のクラブ数を増やすことに重点が置かれてきた。そして目標に掲げてきた60クラブの上限に達し、今後いかにリーグ内の「質」を改善し上げながら成長させていくかが大切になっていく。
そうしたなか「日本サッカー協会選手契約書(統一契約書)」の矛盾、時代に即した変更も課題の一つに。Jリーグではまず新人は年俸上限480万円のC契約を結ぶように定められ、そして試合出場時間など条件を満たすと、上限のないA契約に移行する。
Jクラブが平等に選手獲得のチャンスがあり、また“お試し”とも言えるが多くの選手にプロになる道が拓かれたルールである。ただしデメリットとして、海外に、そのルールは通用しない点が挙げられる。そのため近年は、高校からJクラブを介さず海外クラブと契約する事例も増えつつある。
また2018年にブラジルのサントスFCからスペイン1部レアル・マドリードに移籍したロドリゴの場合は17歳にして(18歳になると同時に契約履行)、移籍金約4500万ユーロ(約70億円)、年俸350万ユーロ(約5億4000万円)以上という条件だったと言われる。そういった超スーパースター候補も、安価で海外に流出できてしまう状況でもある。
また、最近のJリーグでは外国籍選手の枠も拡大された。決して若手が起用されやすい環境と言えず、この契約問題を端緒に、様々な矛盾のあるシステムになっている。
吉田会長は一般的な考えとして「時代にそぐわなくなっている」と指摘した。
「Jリーグ誕生から30年、『オリジナル10』当時にABC契約ができて、全てのチームが平等に選手獲得のチャンスを与えようとできたルールでした。しかし世の中とサッカー界が大きく変わり、よりグローバルな、インターナショナルな基準が求められるなか、僕だけではなく誰の目にも、時代にそぐわないと感じてきています」
そして高校を卒業した選手がJリーグを介さず直接ヨーロッパに出ていくケースが増えてきているとして、「これからも増えて、Jリーグのどのチームも選手を獲得できない状況も起こり得ます。結果、選手、クラブのためにならないと思います」と指摘。「資金を持ったクラブが獲得できる自由競争」が望ましいとした。
「もちろん、そうなると予算の少ないクラブは、よりオリジナリティや自分たちで考えてチームを自走させていくことが求められていきます。それこそが多様性であり、サッカー界で大事になっていくと思います」
資金力のあるクラブがその競争を促進させて、一方、育成クラブが選手をより高額で輩出していく、そのサイクルの活発化と世界の中ででの“競争”が求められるということだ。
関連記事>>【浦和-川崎】家長昭博が主審に“頭大丈夫か”のジェスチャー、侮辱的な行為で波紋を呼ぶ
「同時に最低年俸の保証のところ、現状、J2、J3で非常に苦しく事情を抱えながらプレーしている選手が多くいます。それが本当に正しい道なのか。厳しいことを言うと、(C契約撤廃による)最低年俸を設定すると、プロになれない選手も出てきます。自分たちが基準を作り、そこに入っていくための努力も大事になります。そこが今求められていることではないかと考えています」
逆に“ドメスティック”なルールが整理されていることで、Jリーグが守られてきた一面も少なからずある。どのような妥協点を見出し、世界と伍していくための態勢を作っていくのか。Jリーグ発足から30年、様々な面で岐路を迎えている。