【サッカー日本代表】難しくなった「アジアカップ」の位置づけ。ベスト8の現実、プレミア最高峰で闘う遠藤航や冨安健洋は決して手を抜いていなかったが…
カタール・アジアカップ、ベスト8で敗れた日本代表。(Photo by Lintao Zhang/Getty Images)
Jリーグの力も示してきた過去最多4度の優勝だっただけに。
サッカー日本代表は3月21日・26日、北中米ワールドカップ(W杯)・アジア2次予選の北朝鮮代表との2連戦に臨む。三笘薫の長期離脱、冨安健洋も微妙な状況で、伊東純也の復帰も未定と、主力の柱が不在になる。とはいえFIFAランキングは18位(アジア1位)と114位(同19位)。コロナ禍で対外試合を行っていなかったためにランキングを下げた側面もある北朝鮮だが、それでも選手層で考えれば、日本のほうが大きく上を行く。
W杯予選突破はそれでも厳しいと言われるが、次回アジアには「8.5枠」が与えられる。いろいろなテストも十分可能なレギュレーションで、森保一監督がどのようなマネジメントを見せるかが問われる。
一方、ベスト8に終わったカタール・アジアカップだが、日本代表を貶めた報道の影響も大いにあったとはいえ、振り返ると、全くインパクトを残せず終わった。
リバプールFCの遠藤航、アーセナルFCの冨安健洋と現在最高峰のイングランド・プレミアリーグの首位を争うチームの主力がいる。さらにUEFA欧州チャンピオンズリーグ(CL)ベスト16入りしたレアル・ソシエダの主力である久保建英、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCの三笘薫……確かにタレント力は”過去最強”と言っても過言ではなかった。
それだけに日本代表にとって「アジアカップ」の位置づけが今後難しくなる。そう痛感させられる大会にもなった。
これまではJリーグ組も加わることで、”アジアの中のJリーグ”の強さを示すように、Jリーグ発足前年(すでにプレ大会は開催)の1992年以降、過去最多4度の優勝を記録してきた。
ところが近年の日本代表は欧州組主体の構成に。今回Jリーグクラブからの選出でレギュラークラスだったのは、右サイドバックの毎熊晟矢だけだった(柏レイソルの細谷真大が初戦のベトナム代表戦で先発。イラク戦はスタメン全員が欧州組だった)。
例えば、韓国代表は64年もの間、このタイトルを獲得できずにいるという。驚きではあるが、現キャプテンのソン・フンミンをはじめ、エース級が欧州組であることが続いたチームでもある。その過去とも、少しリンクしてくるような――。
日本代表も今後「アジアカップ」をどのように獲りに行くのか、本腰を入れて行くべきなのか……。”答え”の出ない状況に突入していったと感じる。
選手たちはもちろん優勝を狙っていた。日本代表として狙える数少ないビッグタイトルである。決して遠藤や冨安が手を抜いていたとは思わない。
しかし彼らは普段、プレミアリーグの舞台で、大観衆の観客もまた一挙手一投足をピッチサイドのスタンドから見守るなか、張り詰めたスリリングな90分を戦い続けている。一瞬でも集中を欠いてボールを失えば、何もかも失くすかもしれない。一方、チームを救うファイトには、燃えるような声援と惜しみない大きな拍手がその背中に送られる。究極のテンションのなか、極上の闘いを続けている。環境で言えば、多くの欧州組にも言えることだ。
一方、アジアカップでは、対戦相手はなりふり構わず日本に勝とうと手段を選ばなかった。荒れたピッチや暑さもあったが、自陣を固めてのカウンターやセットプレーでの一発狙い、少しの接触でもピッチに大げさに倒れ込んだり、審判に執拗にアピールしたり時間を稼ごうとしてくる。オフ・ザ・ボールの時間が伸び、選手の注意を緩慢にしようと仕向けてくる。スタジアムの雰囲気も、絶対に勝たせようという、クラブチームにある高揚感は漂っていない。
そこで、リバプールやアーセナルのようなハイパフォーマンスを発揮する、その力を引き出すことを求めるのは無理がある(決勝まで進めば、また違っていたかもしれないが)。イングランドで90分戦うなかで驚くような進化を遂げている彼らに、どこか“牧歌的”なアジアのピッチで、あの最大値のテンションを求めるのは酷と言えた。繰り返しになるが、対戦相手との関係性、相手の戦い方なども影響する話だ。ファウルになりかねないと躊躇さえ余儀なくされ、逆にファウルまがいで止めに来ることもあるのだから。
もしかすると、所属先との違和に選手たち自身も苦しんでいたのかもしれない。もちろん、そうした選手たちを統率して勝利へと導くために、森保一監督には2大会目となるアジアカップ用のマネジメント力も問われたわけだ。
次回はサウジアラビア大会で、再び中東のため時差6時間と”ほぼヨーロッパ”での開催になる。前回大会あたりから”アジアカップはW杯に向けた強化の一環”的な位置づけになり、どこかむず痒く感じてきた。いやいや、ただ本気で優勝を狙うべき大会ではないか、と。そうしなければ過程で得るものはないのではないかと。
しかし今回、アジアカップで得られるのは「優勝」という「結果」しかないのではないか、と感じてしまった。そうなると7試合という長丁場を戦い抜くのは、なかなかの至難になる。いずれにせよ”若手に経験を積ませる”、そのうえでタイトルを狙うという二兎を追う設定だと、どうしても目的意識が曖昧になってしまう……選手選考の難しさがあったとはいえ、結果的にそれは2大会連続で繰り返された。
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アジアサッカー連盟(AFC)内での日中韓など東アジアの勢力が弱まっていることも関係しているのだろう。あの開催中のテロ的報道を含め、日本でのアジアカップの意義自体が弱まっているのも事実だ。日本サッカー協会(JFA)が、”アジア最高峰の大会”をどのように位置づけていくのか。4年後、今度こそ絶対に優勝しよう――と、もっと大きな一体感が生まれているように期待したい。