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【浦和】浮かぶ政治的背景、辛うじて継続されたスタイル。一番残念なのは、まるで負けるのを待っていたかのような監督交代劇になったこと

浦和のスコルジャ監督。(C)2023 Asian Football Confederation (AFC)

スコルジャ流の4-2-3-1に適応できる人材が多く残っているのはプラス材料の一つ。しかし、Jリーグでは再任後に上手くいったケースは限られる。

 J1リーグの浦和レッズは8月27日、26日付けでペア=マティアス・ヘグモ監督を解任し、マチェイ・スコルジャ前監督の復帰を発表した。スコルジャ監督に就労ビザが発給されるまで、池田伸康コーチが暫定的に指揮を執る。

 今回もフットボール本部の戸苅淳本部長ではなく、堀之内聖スポーツダイレクターが声明を発表。監督だけの責任ではないものの、昨季のような強固な守備を見せられず、成長曲線を描けなかったと解任の理由を挙げている。

 昨季までの主力11人中7人が退団し、より攻撃に比重を置く4-3-3と4-2-3-1で戦う転換期を迎えるなか、若手選手がハマると爆発的なプレーを発揮するなど、ヘグモカラーも見えつつあった。リーグ戦5試合勝利がなかったが、直近の鹿島アントラーズ戦では攻撃的な采配を振るって最後までアウェーでも勝点3を狙い(スコアレスドロー)、前半で中止となった川崎フロンターレ戦では完全に圧倒していた(前半終了時点で1-0)。

 それだけに、さすがにこのタイミングでの監督交代はないと見られた。ただし、前週の”試合2日前”のオフに、もう事態は動いていたのだろう。

 さすがに政治的な背景が感じられる監督交代劇になってしまったと感じるのは否めない。

 昨季1年間率いてACL2023優勝を果たしたスコルジャ監督は、堀之内SDが強化部スタッフだった際、当初、候補者ではなかったものの分析担当とともにリストアップ。そこから招へいに成功した。田口誠社長もその功績を認めていた。

 それだけに退任した西野努前SDが招へいしたヘグモ監督を、最大限にバックアップできたか……と言うと、この夏に補強したタレントは主力に食い込めず、いまだ負傷がちなタレントも多い。サミュエル・グスタフソンを除くとヘグモ監督の要望に答えるレベルの戦力は補強できずにいた。1年前からの大幅な戦力ダウンは否めない。

 そんな堀之内SDからの声に応え、スコルジャ監督が再びもうひと肌脱ごうと覚悟を固めてくれたのだ。

 とはいえ、スコルジャ体制下で不動だったアレクサンダー・ショルツ、キャプテンだった酒井宏樹が退団してしまうなど、完全に戦略的に失敗し、後手に回っているのは否めない。

 ただ、スコルジャ流の4-2-3-1に適応できる人材が多く残っているのは、現時点で見出せるプラス材料の一つであり、中島翔哉や小泉佳穂のトップ下起用も可能に。それに伴う本間至恩の活用法増加なども可能性は広がる。フットボール本部ができてからのスタイルの流れが、ひとまず継続されたとも言える。

 とはいえ、クラブが野放図にしている内部情報を掴む匿名人物によるSNSアカウントからの浦和に関する情報発信が続き、ヘグモ監督解任の動きは、かなり以前からつぶやかれていた。まるでウイルスに侵されたように、敵は内にいるようであり、それをほったらかしにしている鈍感さも心配だ。それでは勝ち続けられる集団にはなれないだろう。

 結果的に足を引っ張る勢力がいて、ヘグモ体制が負けるのを待っていたかのような監督交代劇になってしまった。それが一番残念でならない。

 最近のヘグモ監督は若手の勢いを買い、それが噛み合った時の豪快さは、”堅実”だった昨季までにはなかったスペクタクルなものだった。とはいえゲーゲンプレスも実現させたいなか、フィジカルの力も求められるスタイルは、オラ・ソルバッケンのようなタレントがいないと成立しない、ということも痛感させられた半年間だった(ソルバッケンが退団しただけに)。

 いずれにせよ、似た発想を持つ日本人監督が揃うJリーグのなかで、ヘグモ監督のスタイルはスタンダードな攻撃的4-3-3や4-2-3-1とも言えたが説明も理論的で説得力もあり特色があった。

 そしてスコルジャ監督への期待は高まるが、戦力がダウンしている現実を踏まえると、ある程度現実的な戦いが続くことになるかもしれない。

 まだ昨季1年しか率いていないため、スコルジャ体制のサイクルが、これから加速し、成熟していくと期待できるし楽しみだ。一方、Jリーグで監督が再任したあと上手くいったケースは限られる(残留請け負いではなく、優勝を目指す場合で)。

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 ヘグモ体制は昨季ほど安定感がなかったものの、ゴールへ向かっていってワッと盛り上がるシーンは間違いなく増えた。そしてスコルジャ体制が復活し、もしかするとしばらくは、そのハラハラさは減るかもしれないが、安定感を取り戻せる可能性は高い(どのあたりからメスを入れていくかは注目だ)。まずはフリートランスファーになっているポーランド方面からの補強はあるのだろうか。

Posted by 塚越始

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