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【現地取材】クラブW杯で見えたアトレティコ・マドリードが久保建英を獲得するための「条件」

日本代表での久保建英。写真:早草紀子(C)Noriko HAYAKUSA

本気でラ・リーガやCLのタイトルを狙うという目標があれば――。

 アメリカ・クラブ・ワールドカップ(クラブW杯)のグループステージ(GS)で、現地6月19日のアトレティコ・マドリードのシアトル・サウンダーズFC戦(〇3-1)、23日のボタフォゴFR戦(〇1-0)を現地取材し、レアル・ソシエダのサッカー日本代表(SAMURAI BLUE)MF久保建英の獲得が噂されることが頷ける背景と、あまり現実的ではないなとも感じる、その両面が垣間見えた。

 グループBのアトレティコ・マドリードは2勝1敗で3チームが並んだ末、パリ・サンジェルマンに金星を奪ったボタフォゴの番狂わせも影響し、3位で大会を去ることになった。選手のモチベーションも決して高いと言えないなか、若手を起用し鍛えながら結果を残してきたアトレティコには、この短期決戦はあまり向いていなかった感じだった。

 ただ、地上戦と空中戦、テクニックとパワーを上手く融合させたディエゴ・シメオネ監督らしいチームで、ラ・リーガの3強を形成する力を備えていることは十分伝わってきた。

 4-4-2の右MFは指揮官の三男である22歳のアルゼンチン代表ジュリアーノ・シメオネが担った。サウンダーズ戦は同い年のパブロ・バリオスが2ゴールを決めるなど、22歳コンビが躍動。試合後の記者会見でも二人の活躍が話題になり、チームの希望として期待も寄せられていた。

 ジュリアーノ・シメオネは状況によってサイドバック的に最終ラインにも入り、5バック、6バックを形成。そこで同じくアルゼンチン代表MFロドリゴ・デ・パウルがサイドに出て起点になるなど、ローテーションもスムーズに息も合い連環できていた。

 レアル・マドリードやFCバルセロナと比較すると、あるいは彼らに勝つためには、やはり守備に軸足を置く時間もある。そのためサイドの中盤の選手たちの守備意識の高さも印象的だった。

 ジュリアーノ・シメオネはカットインなどテクニックやスピードのある攻撃から変化を与え、そこにパワーと高さのある最前線のアレクサンダー・セルロート、さらに駆け引きに長けるフリアン・アルバレスが関わると、重厚感のあるアタックを生んでいた。が、軒並みサイドアタッカーに脅威を与えられるタレントが揃う今大会において、攻撃面ではそこまでインパクトを残せなかった。

 シメオネ監督が久保のような賢くて仕掛けられるタイプを好きだと語ったのはよく知られる話だ。そこで24歳のレフティ獲得もあるのでは!? と噂されてきた。

 何よりレアル・ソシエダから久保がスペイン国内で事実上のステップアップをするのであれば、古巣レアル・マドリードとアトレティコの他に選択肢があるとは言えない(レアル・マドリードが事実上50パーセントの権利を保有しているため、バルサ入りするには、スペイン国外への移籍を一度挟まないと難しいだろう)。

 久保がアトレティコでラ・リーガ優勝と世界一を目指す。それは確かにファンからすると、見てみたい現実的な展開の一つである。

 ただ、久保の主戦場であるアトレティコの右サイドは、指揮官の息子であるジュリアーノ・シメオネが担っている。いま世界注目の成長株である。

 それだけに、アトレティコ・マドリードが、是が非でもラ・リーガ優勝を目指す。あるいはパリSGのように、UEFA欧州チャンピオンズリーグ(CL)制覇をクラブの悲願に掲げる。そのように“必勝態勢”を築く必要があれば、もう少し、久保獲得は現実的になりそうだ。

 例えばこの伸び盛りである22歳コンビが極度のスランプに陥る、あるいは負傷離脱する……といった緊急事態が起きれば、アトレティコが久保を必要とするかもしれない。ただむしろ久保を加えるならば、久保中心のチームに作り替えるぐらいのプランも必要になるだろう(周囲を強度の高い選手で固めるなど)。

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 無論、シネオネ監督が攻撃に不満を抱え、本気で久保を欲したら、一気に話が動くこともあり得るかもしれないが……。

Posted by 塚越始