【インタビュー#2】WEリーグ岡島喜久子チェア。「対話を重視、そこに気付きがある」

WEリーグの初代チェアに就任した岡島喜久子氏。写真提供 WEリーグ/(C)WE LEAGUE

国際金融のエキスパート。「最も大切だったのはコミュニケーション」

 来年秋に開幕する初の女子プロサッカーリーグであるWEリーグ(Women Empowerment League)の初代チェアに就任した岡島喜久子氏がインタビューに登場。連載2回目は、ビジネスの視点から語ってもらった。

 まず触れておきたいのは、岡島氏のビジネス面の実績だ。ケミカルバンク(現JPモルガン・チュース銀行)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、さらにアメリカ国内の銀行を経て、現在はメリルリンチでウェルスマネジメント、いわゆる富裕層向けの資産運用を担当している。すなわち、国際金融のエキスパートである。

 岡島チェアが当初WEリーグ発足への協力を申し出たのは、こうしたコネクションを活かした企業との橋渡し役を考えていたからだった。

 チェア就任後、まず最重要な決定事項が、参入チームの選定だ。WEリーグ1シーズン目は6~10チームで開幕を迎え、17団体が参入を希望している。そこにさっそく岡島流の選出方法を反映させる。

 希望団体とはすべて岡島氏がヒアリングをする。各クラブトップのみならず選手の声も拾いたいと意欲的だ。

「これまでの仕事上、最も大切だと感じているのはコミュニケーションです。お客様すべてに同じポートフォリオを作るわけではありません。同じファイナンシャルプランニングをするのではなく、いろんな角度から質問してお客様が気付いていないニーズ、心配ごとを掘り起こして、その解決策を提案していくんです」

 ビジネスで培ってきたノウハウをWEリーグに活かし、参入希望に必要な書類だけでははかれない“熱量”を感じ取りたい。加えてヒアリングを通じて、岡島氏の言う“気付いていないニーズ”や“心配ごと”も見つけ、今後のチーム運営に役立ててほしいという考えがある。

「この機会を逃す手はないと思っています。むしろこの機会を逃したら今後チームから意見は出て来ないと思うんです。より詳しく聞きたいのは“女性活躍”の部分です。スタッフの50パーセントを女性にするなど数字的にはかなり高い設定になっていますので、チームとしてどう取り組むのか、そのために何をWEリーグに望むのかを聞きたいです」

 WEリーグが掲げるのは単なる競技面のみのプロ化ではない。クラブの意思決定に関わる者の一人は女性にする、将来的に監督を女性とすることを目指すなど、ピッチ外の法人としての女性活躍の基準が設けられている。猶予期間は設けられているが、本気で取り組まなければクリアできない数字だ。各団体はどれだけ具体的に実現できるかをアピールする必要がある。

 ではファイナンシャルプランナーとしての岡島氏の目から見て、WEリーグの市場価値はどこにあると感じているのか。

「FIFA(国際サッカー連盟)が女子サッカーの発展を後押ししていること、そしてJFA(日本サッカー協会)が多額の投資をしてくれるという点は過去とまったく異なる点です。今年であれば3億円、その後4年間で約10億円という大きな額です」

 期間は限定的だが、これ以上ない後ろ盾は参入チームの不安を払拭するだろう。

 とはいえ不安視されるのは、女子サッカーの興行力の低さだ。

 昨年のなでしこリーグ1試合の観客数平均は1340人。昨年最も動員したINAC神戸レオネッサでも1試合平均は3045人である。ただWEリーグの目標観客動員数は1試合5000人を掲げる。

 強力なテコ入れが必要なのは明白である。JFAの投資に頼るだけでなく、自立できる興行力を育てなければならない。そのためにもWEリーグに賛同するパートナー企業の獲得も急務だと言う。

「ともに創造する“共創パートナー”と言っていますが、理想としては一緒に商品開発などできればいいですね。まだ具体的な話には至っていないので、まだまだこれからです。コロナ禍ではありますが、そこも重要なのはコミュニケーション。ニューノーマルの時代が訪れているからこそ、オンラインも駆使して企業トップの方とも話をできるようにしていきます。女性活躍とWEリーグが考えている理念のすり合わせをトップとできれば、前に進めていくことは可能だと思っています」

 WEリーグは、未知への挑戦でもある。

 これまでの取り組みと同じことをしていては興行面の向上は見込めない。

 奇しくも時代はコロナ禍である。時代はこれまでの常識を覆す変革が必然的に求められている。WEリーグが産声を上げるまで難問は多いものの、そこは挨拶代りとばかりに、岡島氏の手腕に期待したい。

マッチアップを展開するINACの鮫島彩(左)と浦和Lの猶本光(右)。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

注目記事:【インタビュー#1】WEリーグ岡島喜久子チェア。高1で行動に移した「代表チームを作る」

[取材・文:早草紀子]

Posted by 早草紀子

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