【なでしこ】ノジマが見せた見応えある首位・浦和へのチャレンジ。立ちはだかったのは
松田早和の同点弾に沸くノジマ。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
4-3-3の狙いが見事にハマったが――。浦和のエース菅澤優衣香にハットトリックを許す。
[なでしこ 8節]ノジマステラ 2-3 浦和L/2020年9月6日/相模原ギオンスタジアム
首位を走る浦和レッズレディースのエース菅澤優衣香がハットトリックを達成したとなれば、ワンサイドゲームを想像するだろう。しかし、ホームのノジマステラ神奈川相模原が耐え、浦和の攻撃を封じ込める時間は長かった。リズムよく攻撃を組み立てて一時は同点にまで追いついた。終盤にペナルティキックで浦和に決勝点を与えたが、ノジマは互角以上といえる健闘ぶりを見せた。
今シーズンのノジマは対戦相手ごとに戦い方を変えてきた。北野誠監督が浦和相手に用いたのは4-3-3システム。その布陣の狙いはボールの奪いどころだった。
「両サイドバックの石田(みなみ)と小林(海青)のところで奪うよう、彼女たちのほうへ追い込む形にした」(北野監督)
菅澤へのタテパスの供給を断つための策だった。
ただ誤算はその策を施す前に2失点を食らったことだ。最初に与えた2分のチャンスで先制され、前かがりになったところを突かれ22分で2失点。ちょうど前半の飲水タイムまでに喫した2ゴールは重くのしかかった。
ただ、ここからノジマは踏ん張った。
最終ラインから声を掛けて、中盤でしっかり競り合いボールをサイドで追い込もうと試みる。これがハマると、指揮官が狙っていた両サイドバックでのボール奪取が増える。
ボールを奪ったあとのスピーディな展開はノジマの強みである。すると35分、ノジマにゴールが生まれる。
南野亜里沙が中央に持ち込み、スルーパスで狭いコースを突く。イメージを共有して走り込んでいた平田ひかりが、これを決めた。
68分、今季初めてベンチ入りした松田早和が途中出場からゴールを決め1点差に。流れが一気にノジマへ傾いた。ただ、そこからあと一押しができなかった。
2-2となったあと一進一退の駆け引きが続くなか、膠着状態を打ち破ったのは、浦和のエース菅澤だった。
83分、裏に抜けた菅澤の前を阻むのはGKのみ。懸命に追いかける櫻本尚子がたまらず倒してしまい、ノジマはPKを献上してしまった。
「点を取りに行こう。上げろ、上げよう!」
終盤の苦しい時間帯に最終ラインから手を叩き、声を上げて鼓舞してきたキャプテンの石田も、一瞬下を向く。しかし、すぐに切り替え、前を向いた。残り5分を切ってもノジマの足は止まらなかった。
しかし――首位に立つ浦和の守備を、再びこじ開けることはできなかった。
キャプテンの石田は唇を噛んだ。
「菅澤にやられたって感じです……。能力で負けたわけではないというか、チーム力では勝っていた部分もあったと思うので、より悔しさが大きい」
松田が初ゴールを決めた際、前線の喜びの輪に飛び込んだ。
「せっかく松田も活躍してくれたのに……。ディフェンスとして3失点したら負けるのは当たり前。失点をとにかく減らしたい」
しかし、北野監督も確かな手応えを感じている。
「手応えはあります。徐々にですが僕のやりたいこと、やってほしいことを、彼女たちは今すごく学んでくれていると思います」
わずかに及ばなかった。一方、浦和を相手にどう戦うべきかを選手たちは表現してみせた。うつむく必要はない。見応えのある首位へのチャレンジだった。
注目記事:【インタビュー#3】WEリーグ岡島喜久子チェアが語るコロナ禍の新時代へゼロからの出発「『既存の価値観に捉われない』私をどんどん使っていきたい」
[文:サカノワ編集グループ]