長谷川唯がACミラン移籍を語る「1位を目指し自分を必要とされているとすごく感じた」
ミラン移籍が決まり、抱負を語った長谷川唯。
WEリーグ開幕まで実戦から遠ざかる点も考慮し、今このタイミングでの夢への挑戦を決断――。
なでしこジャパン(日本女子代表)と日テレ・東京ベルディベレーザで中心選手として活躍してきた長谷川唯が1月29日、イタリアのACミランに完全移籍することが決まった。幼少期より抱いていた海外移籍の夢を果たす時がきた。
現在24歳の長谷川だが、女子U-17ワールドカップ(W杯)で世界一の座を手にし、U-20世代、なでしこジャパンへとステップアップしてきた。なでしこジャパンに初招集されたアルガルベカップ(ポルトガル)では、20歳ながら物怖じせず、その非凡な才能をさっそく発揮したのはとても印象的だった。正確なタッチからのシュート、相手の隙を突くミドル、異なる展開から2ゴールを奪取。加えて躊躇なく持ち場を離れてボールに絡む嗅覚の鋭さも光った。
彼女が動けば、何かが起きる――。そう思わせてくれるのが長谷川だった。
2019年には、なでしこジャパンの一員として、フランス女子ワールドカップ(W杯)のピッチも踏んだ。そして初招集から4年、高倉麻子監督から寄せられる信頼も厚く、より自覚を求められてきた。
今年は1年遅れの東京オリンピックが夏に予定されている。ただ日本初のプロサッカーリーグWEリーグの開幕は9月で、プレシーズンマッチがあるとはいえ、空白期間ができてしまう。
今回の移籍はコロナ禍であることを差し引いても、長谷川にとっては今しかないビッグチャンスだった。
イタリア1部リーグでACミランは、首位ユベントスに次いで2位につける(勝点3差)。十分に優勝を狙える位置だ。
なでしこジャパンの熊谷紗季がオリンピック・リヨンに優勝をもたらすゴールを決め、最高の盛り上がりを見せた女子欧州チャンピオンズ・リーグ(女子CL)は射程圏内にある。
この10年で急速に発展を遂げてきたヨーロッパの女子サッカーに飛び込むことで、長谷川自身も狙う女子CLへの道が目前に開かれている。
「男子もビッグクラブですし、女子はまだ創設されてからあまり時間も経っていないですけど、1位を目指すという明確な目標があった。自分を必要とされているとすごく感じて、自分個人がっていうよりはチームと一緒に上を目指したいと思った」
日テレに残る道ももちろんあった。ただ彼女の心を揺さぶったのは、チームとして頂上を目指すACミランのチャレンジだった。
ACミランが長谷に用意したのは背番号「4」、そしてトップ下で戦う覚悟だ。長谷川の特長が最も生きるポジションと言える。
女子W杯では動きを封じられる場面もあった。その経験を生かして、ドリブル、パスのタイミング、ターン、切り返し……様々な確度と精度に磨きをかけてきた。
イタリアの地での勝負。その山が高ければ高いほど、その攻略方法を嬉々として探し始める。そんな彼女が胸を躍らせてチャレンジする姿が、今から楽しみだ。
注目記事:【考察】監督はレッドブル出身、南野拓実のサウサンプトン起用法は?
[取材・文:早草紀子]