【なでしこジャパン】東京五輪「切り札」候補、浜田遥に遅れて訪れた春
鹿児島合宿でアピールに成功、今回、なでしこジャパン入りを果たした浜田遥。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
明日、“ホーム”仙台スタジアムでパラグアイ戦。彼女らしいゴールを決めたい。
なでしこジャパン(日本女子代表)が昨年3月以来、久々となる国際親善試合に臨む。4月8日にパラグアイ代表、11日にパナマ代表と対戦。今回25人が高倉麻子監督のもと招集され、今オフに海外移籍した岩渕真奈(アストン・ヴィラ)、長谷川唯(ACミラン)ら6人の海外組も合流。一方、チーム事情などにより、守備の要となる熊谷紗季(オリンピック・リヨン)は不参加となった。
コロナ禍の影響で、代表活動はキャンセルが続き、2月の「SheBelievesCup(アメリカ)」への参加も見送った。せめて3月のキャンプはしっかりと活動をしたいと、場所を当初予定の都内から鹿児島に移して約2週間の長期合宿を行った。
この鹿児島で高倉監督の評価され、今回メンバーに選出されたのが浜田遥(マイナビ仙台レディース)だ。
「自分には足元の技術が全然ない」
浜田が自身のプレーを語るうえで必ず口にする言葉だ。しかし浜田の経歴は彼女のポテンシャルの高さを裏付けている。JFAアカデミー福島1期生として、世代別の代表で活躍。田中美南(バイヤー・レバークーゼン)やGK池田咲紀子、猶本光(ともに三菱重工浦和レッズレディース)ら同世代の選手がなでしこジャパン入りするなか、浜田の初招集は昨年の秋だった。
「結果を残しているのに選ばれないのであれば悔しさもあると思いますが、自分は全く結果を残せていなかったので(選ばれないのは)当然のこと。みんなが選ばれていくのを見て、自分もがんばってみんなとまた一緒にサッカーがしたいと刺激をもらってました」(浜田)
焦りがなかったはずはない。だからこそオリンピックを控えたこの時期に得たチャンスを逃したくはない。
28歳とは思えないほど謙虚で貪欲さがある。ピッチやミーティングで示される情報を全身に詰め込み、1日1日を無駄にしない姿勢は高倉監督も認めるところ。合宿終盤に行われた男子大学生とのトレーニングマッチでは相手DFの背後を取るプレーで見事2ゴールを決めてみせた。
FWとして奪った1点目は清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)から、代表で初めて担った右サイドハーフから狙った2点目は猶本からのロングフィードにしっかりと合わせた彼女らしいゴールだった。
「この2ゴールで自分の立ち位置が変わるとは思っていません」と浜田は気を引き締める。そして高倉監督が浜田に求めているのは「これまでのなでしこジャパンにはいないタイプ」、「どんな形でも点を獲る泥臭さ」だ。
ボール捌きやトリッキーなドリブルを望むなら他の選手を選ぶだろう。指揮官が浜田に託したいのは、形にこだわらない“決定力”だ。
「(オリンピックへの道は)厳しいと思いますが、それでも諦めないでコツコツと自分でできることを続けていきたい」
浜田は鹿児島キャンプで、東京オリンピックへの想いが強まった。JFAアカデミー時代にサッカーと懸命に向き合っていた浜田と、オリンピックを目指してがむしゃらに挑む浜田。10年以上の月日による成長を感じつつも、驚くほど彼女の印象が変わらない。
できないことを嘆かず、できることを最大限に伸ばそうと体当たりしていく。U-17、U-20代表として活躍していた当時の持ち味もそうだった。今、ようやくなでしこジャパンとして国際舞台に立つチャンスを得た。
浜田のホームタウンでもある仙台で、泥臭くゴールを決める彼女の姿をぜひ見せてほしい。
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[取材・文・写真:早草紀子]