再開初戦4000人以上来場、WEリーグ大宮Vが歩む“シン”のプロへの道
4,024人を迎えた大宮VENTUSの一戦、スコアレスドローに終わった。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
卒団するサッカー少年・少女を迎え入れていただけに――。
約3か月の中断期間を経て再開されたWEリーグ、4024人の観客を集めたのが大宮アルディージャVENTUS対ノジマステラ神奈川相模原戦だった。しかし強風が吹くなかでの試合はゴールシーンがなくスコアレスドローの痛み分け。勝利を掴めなかったホームの大宮Ⅴの選手たちは一様に悔しさを滲ませた。
「何がなんでも勝ちたかった」と、後半に投入され一気に流れを呼んだ山崎円美は唇を噛んだ。また中盤でのプレッシングが効いていた村上真帆は「ただ『頑張っていた』だけではなく、プロなので結果で見せないといけなかった」と、勝点1に終わった結果を悔やんだ。
この日の観客席にはサッカー少年少女たちが多く詰めかけていた。
毎年男子の試合前に行われていたサッカー少年団の卒団式が、この日はWEリーグ開催日に行われていたからだ。ただの“動員”とは意味合いが異なる。
卒団を迎えた子供たちはゆったりとピッチの感覚を味わえた。そして何より新規参入の大宮Vにとっては認知度を上げる絶好の機会だった。
それだけにゴール後の歓喜を、勝利に沸くスタジアムの雰囲気を、観客席と共有できなかったのは何よりも痛恨だった。
コロナ禍で直接触れ合うイベントが開けないなか、選手たちはSNSなどで発信し続けてきた。また男子の試合での告知も積極的に行ってきた結果、大宮Vを観に来る観客はVENTUSの選手たちを知ろうとする探求心も旺盛だと感じた。また、この日、来場していた岡島喜久子チェアがコンコースを歩けば、サポーターから引っ切り無しに声がかかっていた。
大宮Vのサポーターが集うゴール裏。この試合ではスタジアムで、太鼓の音が鳴り響いた。これもまた大きな一歩だった。それを見た選手たちに思わず笑顔がこぼれた。
現在、大宮Vの観客動員数は1試合平均2615人、合計15691人だ。WEリーグではトップだが、それがそのまま人気に比例しているというわけではない。
珍しさのあった前期から、後期はその戦いぶりへ。見る人の目もシフトされていく。
一方、WEリーグが開幕して明らかに変化したのが選手たちの“見られる”ことへの意識だ。つまりそれは観客動員数であり、時に成績よりも重みを持つこともある。
大宮Vの選手たちにとっても例外ではない。誰も来てくれないのではないかと怯えてすらいたプレシーズンマッチから、サポーターの存在は最大のモチベーションになっている。
試合後、選手たちがサポーターの一人ずつの顔をしっかりと見ながら拍手に応える姿からも、そうした感謝の気持ちが感じ取れる。
12日はアウェーでちふれASエルフェン埼玉との「埼玉ダービー」に臨む。
現在2勝6分3敗で11チーム中6位。ここでしっかりと勝ってクラブの価値を高められるか。大宮Vにとって勝負のWEリーグ後半戦となる。
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[取材・文:早草紀子]