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大学生、短大生、専門学生がチケット購入「+1枚無料」。なでしこジャパン、ニュージーランド戦[WAKE UP W-SOCCER]

大宮アルディージャVENTUSの有吉佐織。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

日本サッカー協会女子委員会の呼びかけで、WEリーグ選手会、学生が連携――初の試み。

 なでしこジャパン、WEリーグに共通する悩みどころの一つが伸び悩む観客動員数だ。そこに新たなファン層獲得を目指して、女子サッカー選手と大学生がともに大きな一歩を踏み出した。

「WAKE UP W-SOCCER」は日本サッカー協会女子委員会の呼びかけで、WEリーグ、選手会、そして城西大学経営学部、法政大学スポーツ健康学部のゼミ生の協力を得て始動した日本女子サッカー振興プロジェクト。組織の枠を超えての活動は初の試みだ。

 キーワードは“学生”。昨年のWEリーグ観客層を大きく分けると、これまで同様に女子サッカーを応援するコア層、各チームが戦略としてアプローチし続けてきたファミリー層とサッカー少女層と大きく三つに分けられる。

 客層として十分にタッチできていなかったのが、選手たちと同世代であることが多い“学生層”だった。

 その学生を巻き込んで、選手と協力しながら一つのプロジェクトを成長させていくとどのような化学反応が起きるのか——今回はその挑戦の第1回目となる。

 対象試合は10月9日に長野Uスタジアムで行われる「MS&ADカップ2022」日本女子代表(なでしこジャパン) vs ニュージーランド女子代表戦。ここで女子サッカーの振興のために何ができるか、与えられる企画ではなく、ゼロからのスタートだった。

 学生は総勢35名、選手はホームスタジアムで代表戦が行われるAC長野パルセイロ・レディースから15名、大宮アルディージャVENTUS、日テレ・東京ヴェルディベレーザから4名の有志選手が参加。オンラインによる全体ミーティングを重ね、それぞれ施策アイデアを出し合った。サッカーの現場を知る選手たちと、同世代の実情を知る学生たち。イメージをすり合わせながら、施策を練り上げた。もちろん、最初からすべて流れるように進んだ訳ではない。

「企画から実行に落とし込む一連の作業を初めて体感できた」
「初めてリーダーシップを取る立場を経験した」

 活動を通して学生からはこうした実りを感じるとともに、大きな難題として上がったのがコミュニケーションの難しさだった。開始直後はまだ遠慮もあり、活発な意見交換には至らなかった。オンラインは確かに便利ではあるが、初対面の相手と一つの作業を進めるには、互いの意見をしっかり伝え合わなければ溝が生まれてしまう。信頼関係を築くためのコミュニケーションのあり方は引き続き、向き合っていく課題の一つだが、両者にとってその気づきも大きな前進だ。

 そうして議論を重ねて生まれた施策が、「大学生、短大生、専門学生限定!!+1チケット」だ。対象学生がプロジェクト指定のチケットを1枚購入すると、誰でも1名を招待できるというもの。

「誰かに誘われたら行ってみたいけど……」

「せっかく長野になでしこジャパンが来るなら見てみたいけど……」

 けれど一人でスタジアムに足を運ぶというのは勇気のいるもの。サッカー初心者ならなおさらだ。そこをターゲットにしたのが、この+1チケット。

 チケット情報の告知、女子サッカーの魅力の発信手段として彼女たちが選択したのは学生世代で気軽なSNSツールとして利用されているインスタグラムだ。

 パルセイロの選手たちは地元のみどころや、自らが対戦した経験から代表選手の特長を紹介する動画などを作成し、学生が編集。長野の女子サッカー熱を掘り起こそうとしている。

 また、試合開催地と離れたところから、別角度でこの活動に参加したのが大宮アルディージャVENTUSの有吉佐織だ。

「所属チームや代表で活動していても、実際にどうやって集客しているのかというのは、選手の立場では詳しくは知らないので興味があったのと、なでしこジャパンにもっとたくさんの人に興味を持ってもらいたいという気持ちがありました」(有吉)と参加を決意したと言う。 

 有吉はプロジェクト内ではチケット関連を担当しているが、代表に選出されたチームメイトの乗松瑠華、井上綾香の両選手の動画撮影も請け負った。

「普段の二人の表情が伝わればいいなと思ってラフな感じに持っていきました。これとこれ……、これ、これを30秒で言って! からの一発撮り。あたふたして話す内容を忘れても面白いじゃないですか。実際にルカ(乗松)は焦ってまた最初の質問に戻ってたし(笑)。その動画も送ったら、そのNGの方が採用されてました!」(有吉)

 有吉はかなり楽しみながら活動に参加している。そして何より+1チケットの発想を大絶賛。学生の感覚に刺激を受けたようだ。

「SNSの発信の仕方もそうですけど、学生の目線は幅広いですね。私たちはどうしてもサッカーに興味のある人を取り込もうとしてしまう。でも学生はサッカーに興味のない層に向けても発信したいと言う。だから+1チケットはめちゃくちゃ面白いと思ったし、大宮でも似たような形は出来るんじゃないかと思ってます」(有吉)

 今後も形を変えて継続を目指すこのプロジェクト。今回はチケットの施策だが、大きな狙いは日本女子サッカーの魅力を広めること。コンテンツは誰でも楽しめる内容になっているので、ぜひ彼女たちのインスタグラムをチェックしてもらいたい。

WAKE UP W-SOCCER インスタグラム
(https://www.instagram.com/wake_up_w_soccer/)

インスタグラム(@wake_up_w_soccer)にて、無料チケットのプレゼントについて告知されている。

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Posted by 早草紀子

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