ムバッペに続き東京五輪への選手派遣拒否が欧州で広がる可能性「権利の範囲内」とデシャン監督
パリ・サンジェルマンのキリアン・エムバペ。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
FIFAは23歳以下の派遣義務を明文化、しかしCASは「法的義務なし」。
フランス紙『ラ・パリシャン』などフランスの複数メディアは3月3日、パリ・サンジェルマンがフランス代表FWキリアン・ムバッペの東京オリンピックへの派遣を認めない方針を固めたと報じた。U-23フランス代表は東京五輪への出場権を獲得し、現在21歳のムバッペは年齢的には「オリンピックエイジ」にあたる。同メディアは、クラブと選手による議論の長期化を望んでおらず「これでほぼ最終決定だ」と強調している。
オリンピックへの選手派遣に関しては、FIFAの定める国際Aマッチデーのような拘束力がなく、2008年の北京五輪の際、ブラジル、アルゼンチンの両代表と欧州クラブが対立。スポーツ仲裁裁判(CAS)では「(五輪への選手派遣について)法的な拘束力はない」とする判断が下された。
その後、FIFAは23歳以下の選手に関しては選手派遣の義務があると明文化し、2012年のロンドン五輪は基本的にはそのルールのもとで行われた。とはいえ「義務」にするとチーム間による有利不利が生じるため、2016年のリオデジャネイロ五輪では、クラブに選手派遣の義務はないものの努力すべきであるという言い回しになった。
そうしたなか、東京五輪を前に、オリンピックで世界王者になるという目標を掲げ、事前の80人の候補者リストに入っていたムベッペの挑戦の道が事実上断たれた。また、この決定が、東京五輪への参加希望を表明していたブラジル代表FWネイマールらにも影響を及ぼしそうだという。
また、フランス代表のディディエ・デシャン監督の次のようなコメントも掲載されている。
「パリ・サンジェルマンやおそらく他クラブも、そういった立場にあれば、権利の範囲内にある。(オリンピックチームは)シルバン・リポリが監督を務めています。オリンピックはFIFAの管轄外であり、対象の選手(23歳以下)が10人でもいるようであれば問題でしょう」
記事では、200以上のクラブで構成される欧州クラブ協会(ECA)は、五輪については選手個々による交渉になりそうだと伝える。例えばレアル・マドリードの34歳のDFセルヒオ・ラモスはオーバーエイジとしてスペイン代表でプレーしたいという意向を示し、ジネディーヌ・ジダン監督もその挑戦を後押しする考えである(クラブの考えは分からない)。
もちろん、新型コロナウイルスの感染に関する情報が否が応にも悪い形で、ヨーロッパに広まってしまっている。その影響も今後出てきそうである。
オーバーエイジの選定を含めて、東京五輪への選手派遣についても、そろそろ話題になってくる時期だが……。「TOKYO」の舞台を楽しみにしていた選手たちが、さまざまな情報に気を揉んでいる。
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[文:サカノワ編集グループ]