Jリーグが京都に100万円罰金制裁。ナチス想起の旗でサポーター応援、新スタジアムこけら落としの一戦にて…
写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
交差した骨の上にどくろが乗るデザインと酷似。ほぼ同じ旗が2010年から振られてきた。
公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ / 村井満チェアマン)は6月8日、リーグの裁定委員会に諮問し、2月9日のセレッソ大阪とのプレシーズンマッチでサポーターがナチスを想起させるデザインを旗で応援をした京都サンガ F.C.に対して罰金100万円の懲罰を下すと発表した。サンガスタジアム by KYOCERAの記念すべきこけら落としの一戦が、思わぬ形でクローズアップされてしまった。サッカーのチームや選手を応援することと直接関係しない政治色のある旗は、世界的な潮流からも一段と看過されない状況となってきている。
対象の試合は、今年2月9日に同スタジアムで開催されたJリーグ・プレシー ズンマッチの京都対C大阪戦。京都サポーターが、ホーム側ゴール裏スタンドで、人種差別主義を標榜・実践したナチスドイツの親衛隊が使用した、交差した骨の上にどくろが乗るデザインと酷似し、一般的には自然とナチスドイツを連想させ得るデザインを表示した旗を振って応援をしていた。
懲罰内容は、罰金100万円。懲罰理由は、京都サポーターは2010年に今回と酷似した旗を、その前年に振っていた者から譲り受けて2019年までほぼ全てのホームゲームで振っていた。その後、新スタジアムのオープンに合わせて旗を新調し(外見上大きな変更はない)、この試合で使った。
JリーグはFIFAやJFAと連携しながら反人種差別の取組を進め、2017年に今回の件と同種の事案が発生した際にも各クラブに注意喚起を図ってきた。京都は横断幕などについては試合会場で不適切なものがないか目視確認していたものの、個別に旗のデザインについてまでは目視確認せず、旗が長期間にわたりほぼすべてのホームゲームで振られるのを結果として看過してきた。
一方、Jリーグは酌量すべき事実として以下を挙げている。
1) 京都サポーターは本件の旗のデザインの意味を理解せず、差別的意図を有しないままに本件旗を振っていた。
2)京都において、サポーターによる差別的行為は初めてであったが、本件事象が発覚した後、SNSなどで事態の重大さを速やかに把握し、実行者の特定に至った。
3)自クラブホームページで速やかに謝罪するとともに、今後のホームゲームで差別的思想を連想させる旗、横断幕等の持ち込み並びに掲出の禁止を発表しているほか、実行者に対し、厳重注意を行った。
4) 2020年2月23日に開催されたJ2リーグ1節のアウェー山口戦で、スタ ッフが旗デザインのチェックを実施し、再発防止に向けすぐに具体的行動に着手した。
5)横断幕・旗デザインの事前承認制度を新設するとともに、スタジアム内の監視体制の整備やサポーターの理解促進、再発防止のための啓発に積極的に取り組んでいる
■適用条項■
『Jリーグ規約』 第 133 条[Jリーグにおける懲罰]第 1 号 ※なお、量刑の判断においては、第 153 条[1,000 万円以下の罰金]を参照して判断
『JFA懲罰規程』 JFA懲罰規程別紙1.3-5[差別](3) <参考>Jリーグ規約 第 133 条〔Jリーグにおける懲罰〕 Jリーグは、JクラブまたはJクラブ関係者による本規約、JFA懲罰規程その他の諸規程の違反行為について、次の各 号の定めに従い懲罰を科すものとする。
1)競技および競技会に関する違反行為に対しては、JFA懲罰規程に基づき懲罰を科す
2)競技および競技会に関するもの以外の違反行為については、本規約に基づき懲罰を科す第 153 条〔1,000 万円以下の罰金〕 次の各号のいずれかに該当する場合は、1,000 万円以下の罰金を科す。
1) 第3条〔遵守義務〕第5項、第6項または第7項に違反した場合
2)第 26 条〔Jクラブの健全経営〕第3項に違反した場合
3)第 30 条〔役職員等の禁止事項〕第1項に違反した場合
4)第 49 条〔ユニフォーム〕第1項、第2項または第3項に違反した場合
5)第 110 条〔契約等〕第3項に違反した場合
<参考>JFA懲罰規程別紙1 3-5.差別 人種、肌の色、性別、言語、宗教、又は出自等に関する差別的あるいは侮辱的な発言又は行為により、個人あるいは 団体の尊厳を害した場合、以下のとおり懲罰を科すものとする。但し、軽度の違反の場合は、譴責若しくは戒告、その 他軽度の懲罰に留めることができる。
(1)違反者が選手等(アマチュア選手を含む)の場合は、違反当事者に対して、原則として最低5試合の出場停止処分 及び10万円以上の罰金を科す。
(2)同一のチームに所属する複数の個人が同時に本条に違反した場合は、当該チームに勝点の減点処分(初回の違反は3点、二度目の違反は6点)を科す。さらなる違反の場合は、下位ディビジョンへの降格処分を科す。なお、勝点 が伴わない競技会の場合は当該チームの競技会への参加資格を剥奪するものとする。
(3)違反者がサポーターの場合は、その有責性にかかわらず、当該チームに対して40万円以上の罰金を科す。重大 な違反には、観客のいない試合の開催、試合の没収、勝点の減点、又は競技会の資格剥奪などの追加的な懲罰を科す。
(4)違反者が観客(サポーターを含む)の場合は、最低2年間、スタジアムへの入場を禁止される。
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[文:サカノワ編集グループ]