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レアル移籍の久保建英。唯一の懸念は「3部リーグ」のレベル、FC東京と比べて…

FC東京時代、久保建英がゴールを決めて、長谷川健太監督とハイタッチ。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

タレントは揃い、立ち位置はあくまでトップチーム予備軍――。

 FC東京の久保建英のレアル・マドリーへの完全移籍が6月14日、正式に決まった。1年目は「カスティージャ」と呼ばれるBチームの所属となり、スペイン3部リーグでプレーするという。

 一方、現地の報道では5年契約、年俸約2億4000万円とも、1億円とも言われている。いずれもFCバルセロナが難色を示した条件を、レアルがすべて受け入れたとされる。

 唯一の懸念と言えるのが、スペインとはいえ、「3部リーグ」のレベルにベースを置くことだ。

 スペインのみならず、欧州全般に言えることだが(Jリーグにも)、1部と2部には明らかな差がある。華麗であり組織化された戦いを続けているチームは基本的に限られる。1部、2部ともに、上位と下位チームでは洗練度が異なり、下位チームはほぼ共通して、肉弾戦、前線の「個」の打開力頼み、ロングボール中心など、つまりパワーや前線の個の打開力に頼るところが目立つ。

 1部より2部のほう(下位チーム)が、そのカラーは一段と色濃くなる。

 そういった背景もあり、組織の中でカラーを発揮し、欧州行きの切符を掴んだ日本人選手だが、4大リーグの2部リーグに移籍したあと1部で大成した例は非常に限られる。むしろ、まだないとも言える。

 これまでJリーグから欧州4大リーグの2部リーグに移籍して成績を残した選手は、乾貴士(Vflボーフム→アイントラハト・フランクフルト→エイバルなど)、細貝萌(アウクスブルクFC→レバークーゼン→ヘルタ・ベルリンなど)や大迫勇也(11860ミュンヘン→1.FCケルン→ヴェルダー・ブレーメン)など限られる。柴崎岳(CDテネリフェ→ヘタフェCF)があと一息のところで伸び悩んでいる。最近の若手は、関根貴大、井出口陽介をはじめ、ドイツ、スペインの2部を選択して、ステップアップしたケースは少ない。宇佐美貴史、原口元気などは一度2部を経験したあとパッとせずにいる。近年はルールの厳格化に伴い移籍が難しくなったが、育成に主眼を置くオランダ経由で出世するケースも多かった。

 レアル・マドリーのカスティージョに所属することになった久保は、さらにその下の60チームが地域ごとに分かれる3部でプレーすることになる。

 リーグとしては、J1リーグのほうがレベルは高い。ACL王者を2年連続で輩出し、3年前のクラブワールドカップ準優勝チームも輩出したJ1リーグで、現在、首位チームをけん引してきたタレントにとって、環境面を含め物足りないレベルになるのではないか。FC東京サポーターの声援をも力に変え、集中力を高める武器にしてきた久保にとって、最大6000人収容となるスタジアムでのプレーがどのように影響するか(初心に戻れるとも言えるが)。

 もちろん、立ち位置は、あくまでもレアル・マドリーのトップチームの”予備軍”である。

 リーグで勝つこと以上に、監督就任が予定されるラウル・ゴンザレス氏も、あくまでどうすればトップチームで通用するか――に着眼して起用してくことになる。結果的に久保自身もFC東京U-23としてJ3でプレーした経験が現在につながったとも言え(そうではないという意見も、もちろんありそうだが)、マイナスばかりではない。

 また、レアル・マドリーのトップチームの公式戦は年間最大60試合以上ある。Bチームからの昇格は頻繁に行われる。

 衝撃デビューを果たしたブラジル代表の18歳ヴァニシウスも、カスティージャから何度かトップチームでの出場機会を得たのち、トップの監督交代に伴い、カスティージャ時代のソラーリ氏昇格に伴い、レアルの中心選手へと成長を遂げていった。

 久保もそういった出世コースを辿ることが理想形になる。もちろん一方、数多くの選手がレンタル移籍で送り出されてもいるが……(出戻って成功した例もある)。

 それだけ、「個」のアピールに走りがちになるだろう。周りの選手が、久保が気持ち良くプレーできるように配慮していたFC東京の環境から大きく変化するところだ。

 チームとしては世界一へ最も近づくチャンスであるが、一度リーグのランクはダウンする。そのあたりが18歳の久保にどのように影響するか。

 無論、久保がそういった厳しい環境を求めたのは間違いない。何よりすでにスペインで生活した経験があり、コミュニケーションを図れるのは強みだ。これまでの他の日本人選手の挑戦者とはいろいろな面で比較にならないところがある。

 未知なる大海へ――。その先には世界一を目指す白い巨人たちのいる世界が待っている。

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文:サカノワ編集グループ