【清水-鹿島】三竿は「神の手」。なぜ完全なPKが見落とされたのか?
鹿島の三竿健斗。(C)SAKANOWA
左利きのドウグラスが蹴る、と誰もが思っていたところで――。
[J1 25節] 清水 0-4 鹿島/2019年9月1日/IAIスタジアム日本平
鹿島アントラーズの2点リードで迎えた50分、清水エスパルスが相手ゴール前で直接フリーキックのチャンスを掴む。攻撃側から見て右サイドのペナルティエリア手前、左利きのドウグラス、そして右利きの西澤健太がポイントについた。そして、西澤が直接シュートを放った。
このシュートが鹿島の壁に当たってクリアされる。しかしVTRで確認すると、ジャンプして広げた三竿健斗の左腕にボールが当たっているのだ。新競技規則では、直接FKに対し、肩より高い位置で広げた腕にボールが当たれば故意か故意でないかは関係なくハンドリングのファウルになる。
これはハンドの反則だったのではないか? このシーンについて、Jリーグの疑問に残る判定について議論するDAZNの「Jリーグ・ジャッジ・リプレイ」で検証し、JFA(日本サッカー協会)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャーが説明をした。
上川氏は「このスローの映像で見る限り、(キックから壁まで)距離はあり、腕を高く上げている印象があるので、PKを与えていい事象だったと思います」と語った。また、新競技規則が適用される前でも、この「神の手」はファウルになっていてもおかしくはなかったということだ。
では、なぜ西村雄一主審はハンドのファウルを見落としたのか? 上川氏は次のように説明した。
「キッカーが左足で蹴るのか、右足で蹴るのか、それによって主審のポジショニングも変わってきます。ドウグラス選手は左利きで、しかも前節の試合で直接FKによるゴールを決めていました。そこで、主審はドウグラス選手が蹴ると予想し、壁に立つ(向かって)左の選手とゴールが見える位置に立っています。また、ボールの位置的にも、おおかたは左利きの選手が蹴ることが予想されるところではありました」
しかし、蹴ったのは右利きの西澤。キックは向かって壁の「右」を越えるコースを狙ったものだった。
「主審は、もう少しボールに近くにいたほうが良かったと言えます。そうすれば壁の奥も見ることができたと思います。ただ、ドウグラス選手が蹴るだろうということで、壁の向かって左をより意識した位置にいたと言えます」
おそらくはそういった前節の結果などデータも踏まえ、主審もある意味、”駆け引き”をしているということだった。
また、副審がより注意して見ていても良かった(西村主審は副審からは見えずらいピッチ内側の壁をチェックしていただけに)とも、指摘していた。
とはいえ清水としては、”誰もがドウグラスが蹴る”と予測するなか、完全に逆を突くことに成功しただけに……。悔やみ切れない結果となってしまった。
もしもVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されていた場合、ゴールに直結するプレーにあたり、清水にPKが与えられていたということだ。
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[文:サカノワ編集グループ]