【INAC神戸】超攻撃的SB髙瀬が示した可能性。皇后杯に懸ける!
浦和レディース戦ではゴールも決めたINACの髙瀬愛実。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
なでしこリーグはベレーザに敗れ、優勝の可能性が潰える。
[なでしこ 16節]日テレ・ベレーザ 2-1 INAC神戸/2019年10月20日/味の素フィールド西ケ丘
佳境に突入したなでしこリーグ、日テレ・ベレーザ対INAC神戸レオネッサによる2位・3位直接対決は、日テレ・ベレーザが2-1で勝利を収めた。
INACではすっかり年長者の域に入った28歳の髙瀬愛実は右サイドバックに挑み、闘志を燃やしてきた。
ただ、2試合前のAC長野戦(〇2-1)ではスタメンから外れた。
「守備に意識が行きすぎてしまい、モノにできる確信がある時しか前線に上がらなくなってました」
髙瀬はそう語る。
するとスタメン復帰した前節の浦和レッズレディース戦(〇2-1)では、今一度、自分の役割を考え直して臨んだ。165センチと女子選手の中では高いフィジカルを持ち、俊敏とはいかないが、スピードに乗れば怖いものなしだ。
持ち味を存分に発揮しながら、隙あらば前線を目指して駆け上がる。ついにはFW時代を彷彿とさせる見事なファーストタッチから豪快に同点弾を叩き込んでみせた。
あまりの髙瀬の勢いに浦和もたまらずフタをしにかかるが、腹をくくった元ゴールゲッターには焼け石に水。迷いのないプレーは最後まで衰えることはなかった。
髙瀬が躍動できた理由は二つあった。
浦和戦はCBの三宅史織に積極的に攻め上がることを伝えていた。加えてリスク回避策も提案済。互いに信頼を得なければ、サイドバックがこれほど頻繁に攻撃参加などできなかった。
そして二つ目は最終ラインが試合中にしっかり修正のための意見交換をして共有できたこと。浦和戦ではどんなに苦しい状況でも最終ラインを高く保つことを全員で貫き通した。これが功を奏して、中盤はボールロスが激減、攻撃のバリエーションが増えた。
しかし、これはあくまでも浦和に対しての対策だ。リーグ随一の試合巧者であるベレーザとの対戦。8月のリーグカップ決勝で対決した際には惜敗したものの、先制弾を奪い、延長戦にまで女王を引きずり込んだ。今シーズンのリーグ戦ではドローと、互角の戦いを見せている。
「吹っ切れて超攻撃的に戦えたらと思います。ベレーザ戦は本当になかなか上がらせてもらえないんですけどね。でも私みたいなタイプが上がっていくと相手も嫌でしょ?」
そう語っていた髙瀬だが……しかし、優勝に向けて再び牙を研ぎ澄ませてきたベレーザは強かった。今回、1-2で敗れた。延期分の1試合分が多いベレーザに対し、この試合を迎えるまで勝点3差だったINACは、勝てば他力ではあるものの逆転優勝への望みが出た。しかし、残り2試合、この1敗で優勝の可能性は潰えてしまった。
超攻撃的サイドバック髙瀬のオーバーラップがINACのテンポを生み出す。その可能性を示せたことはプラス材料であり、足りなかったものもまた見えたのも収穫だ。
2019シーズン、残すタイトルは皇后杯のみとなった。大会は11月からスタート。INACが2連覇を果たした2016年以来、3年ぶりのタイトル獲得へ挑む。
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[取材・文:早草紀子]