J1残留確定の仙台。しかし渡邉晋監督は未来を案じる「また25年、行ったり来たりを繰り返すことに」
渡邉晋監督。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
内容か、勝利か…。最後は「結果」を追求したことで。
[J1 33節] 仙台 2-0 大分/2019年11月30日/ユアテックスタジアム仙台
ベガルタ仙台がホーム最終戦となった33節、大分トリニータに2-0の勝利を収めて11位にランクアップし、J1残留を確定させた。今季J1にインパクトをもたらしたムービングサッカーを売りにする相手に対し、26分にコーナーキックのトリックプレーから道渕諒平、61分に電光石火のカウンターから長沢駿とゴールを決め、力でねじ伏せた。
ただし、ボールポゼッション率、パス数では大分に大幅に上回られた。そうした内容を踏まえ、仙台の渡邉晋監督は複雑な表情を浮かべ、試合後のフラッシュインタビューに次のように語った。
「うーん……勝負に徹して、勝点3を取れましたけれど……なんとも言えないです。これまで積み上げてきたものがあったはずですけれど、今年の途中から明らかに戦い方を変えて、目の前の勝点だけに執着をしてきました。
それに対して選手たちはものすごく一生懸命に頑張って取り組み、今日のように勝点3も取れて、タフにハードに戦ってくれて、それは素晴らしいこと、ですけれど……。ただ、僕の中では、時計の針が戻ったような気がして。難しい感情です」
勝利か、内容か。それが常に頭の中でジレンマとなっていたことが感じられる。
「もちろん勝利はいろんな人を笑顔にするし、勇気や希望を届けられるし、素晴らしいことなんですけれど、どうやって勝つかということにこだわって、これからベガルタ仙台が進んで行かないと、次の25周年、また同じように、行ったり来たりすることになってしまう気がして……。そんな感じがしています」
そう語って渡邉監督は苦笑いを浮かべた。そしてサンフレッチェ広島戦に向けて、「最後また思い切って戦いたいですし、間違いなく今年1年本当にタフに頑張ってくれた選手たちなので、最後もまた勝利を届けられるように、いい準備をしていきたいと思います」と語った。
大分にボールを持たれたが、勝利はできた。勝つことはできたが、大分にボールを多く握られた。どちらとも言える。大分の上を行く、臨機応変さも身に付けてきている、とも言えるだろう。
ただ、仙台を率いて6シーズン目、渡邉監督としては、こだわってきたはずのポゼッションを貫き7位につける大分に、何か先を行かれているのではないか――そんなジレンマも抱いていたようだ。
仙台はどこへ向かうのか――。果たして渡邉監督は来季続投となるのか。そうであれば例えば、このオフ、欧州の最新のスタイルや世界のサッカーの最先端の事情に触れる機会を設けることができれば、何かヒントを得られる機会になるのではないだろうか。昨季は天皇杯決勝まで進んだものの、今季はそこまでポジティブなニュースをファンやサポーターに届けられなかった。指揮官ではなく、クラブとしての行き詰りが感じられる。次の25周年へ――ダイナミックな”何か”が求められている感じだ。
下位グループから抜け出した仙台は最終節、6位のサンフレッチェ広島とアウェーで対戦する。エディオンスタジアム広島で、14時キックオフだ。
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[文:サカノワ編集グループ]