【東京五輪オーバーエイジ考察】安易な「大迫信仰」は危険だ

ブレーメンでの大迫勇也。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

現在ブレーメンは残留争い、自身も不調。森保式3-4-2-1に合うかどうかも疑問。

[タイU-23アジア選手権 GS3節] 日本 1–1 カタール /2020年1月15日/タマサート・スタジアム

 U-23日本代表は東京オリンピック予選を兼ねたタイU-23アジア選手権グループステージ、1分2敗とわずか勝点1しか獲得できずに敗退を喫した。欧州組のほとんどの選手を招集できず、Jリーグ組もオフ明け、すでに日本はホスト国として五輪出場権を得ている。そうしたエクスキューズはあるなか、超本気モードの中東勢に見事に屈した。 

 今後は実戦の機会も限られることから、五輪本番で23歳以上の3人を招集できるオーバーエイジを、親善試合などでも取り入れチームを作っていく可能性が高まった。

 そうしたなか、ドイツで話題になっているのがヴェルダー・ブレーメンのFW大迫勇也のオーバーエイジ招集である。日本への度重なる長時間移動の繰り返しとまったく休めずにいたコンディションの問題により、昨年のアジアカップ明けに背中を痛めて長期離脱を強いられた。そこからブレーメンは日本サッカー協会にコパ・アメリカへの招集を認めないという通達を早い段階で出すなど、「代表招集」に神経を尖らせるようになっていた。

 ただ東京五輪について、もしもオーバーエイジで選出されることになれば、ブレーメンは出場するかどうかは本人の意向を尊重すると伝えられる。五輪中はブンデスリーガが並行して行われているが、母国開催のオリンピックということで、クラブも選手を尊重する立場を示す。

 とはいえ、大迫が東京五輪チームに加われば百人力である――という、やや安易な風潮には危険を感じる。

 2018年のロシア・ワールドカップ(W杯)では日本代表の前線の柱として活躍し、ベスト16進出に貢献した。そのポストプレーの確度の高さはブンデスリーガでも高く評価される。

 とはいえ、昨年のアジアカップ以降、大迫のプレーは確かにパッとせずにいる。2019-2020シーズンは「新エース」として期待された。が、3節まで3ゴールを決めたあと、ハムストリングスを傷め、復帰後は11月23日のシャルケ04戦(●1-2)で1ゴールしか挙げられずにいる。

 チームは3勝5分9敗(23得点・41失点)の17位で、J2自動降格圏に沈む。下位は混沌としており、十分まだ挽回できる状況ではある。とはいえ、その低迷の要因の一つに、地元メディアは大迫の不調を挙げる。同時にシーズン序盤に見せた好パフォーマンスを取り戻すことが期待されている。

 決して本調子ではない今年30歳になるエースに、これまでのようなパフォーマンス、あるいはこれまで以上のパフォーマンスを求める。それは酷だと言える。

 加えて、3-4-2-1を採用するのであれば、大迫が「最適解」なのかという疑問も浮かぶ。

 森保監督の3-4-2-1は、サイド(ウイングバック)からのアーリークロスを、ゴール前の高い位置にいるセンターフォワードの”鼻先”で合わせるのを狙い、そこからボールがこぼれたり、その先まで流れたり、あるいはディフレクションを起こしたりしたところ、逆サイドの選手やシャドー、さらにはボランチが”一発”を狙うというもの。そこに中央からの崩しも加えていく。

 そんなシンプルな戦術が効果的なのかどうか、それが日本協会の示す「ジャパンズウェイ」なのかという議論はまた別として、いずれにせよ「森保式」の戦い方は見えてきた。であれば、それを磨き上げるしかない。 

 その場合、センターフォワードはまず俊敏性やスピードが重視される。23歳以下の前松本山雅FCのスピードスター前田大然(CSマリティモ)こそ、現段階では最適任に感じられ(ポストプレーに課題はあるが)、さらにバルセロナBの安部裕葵も役割をこなせそうだ。あるいはリバプールFCの南野拓実やFC東京の永井謙佑もオーバーエイジではあるが、森保式3バックには符号しそうだ。

 スピードはそこまでではないものの確実にポストプレーをこなせる大迫をチームに組み込むのであれば、改めてチームをアレンジし直さなければいけない。2004年のアテネオリンピックなど、五輪代表チームがオーバーエイジを採り入れながらも本番で失敗してきた「過ち」を繰り返すことになりかねない。あるいは、A代表の基本布陣である4-2-3-1にすることも視野に入れるか、だ。

 これまでの積み重ねを重視するのであれば、北海道コンサドーレ札幌の鈴木武蔵も選択肢に入れていいのではないか。彼であれば、センターフォワードでも、シャドーでも、チームの形の中に比較的、スムーズに加われそうだ。

 今後は3月にキリンチャレンジカップ2試合、5月に短期キャンプ(Jヴィレッジ)、6月に約2週間にわたる海外キャンプ(欧州組のオフ突入直後)、そして7月の壮行試合(キリンチャレンジカップ)を経て、東京オリンピックを迎える。

 もちろん、大迫は日本のエースだ。ただし、重視すべきはチームとしての戦いであり、「名前」でオーバーエイジを招聘するのはとにかくリスクも高く、過去あまりハイリターンも得られずにいる。

 今回のU-23アジア選手権で思い知らされたように、何となく大会に臨むようだと痛い目に遭う。本気で金メダル獲得に挑む、決勝まで戦い切れるタフな18人の選考が期待される。まずここから、それぞれの選手のそれぞれのチームでの闘いがスタートする。

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[文:サカノワ編集グループ]

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