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久保建英に影響か。ウーデゴールのアーセナル完全移籍が物語るレアル・マドリードの「スポーツモデル」転換期

久保建英。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

ペレス会長、パンデミックにより「計画はリニューアルの時期にある」。

  スペイン1部レアル・マドリードのノルウェー代表MFマルティン・ウーデゴールが8月20日、イングランド・プレミアリーグのアーセナルFCに完全移籍した。この移籍の意味は大きく、レアルのフロレンティーノ・ペレス会長が掲げてきた「スポーツプラン」の転換期を迎えているのではないかと、スペインメディア『エル・コンフィデンシャル』は報じている。

 ウーデゴールはサッカー界の至宝の一人として、2015年1月に16歳になると同時にレアル・マドリードと6年契約を結んだ。時代はちょうどリーグ間の覇権争いで、プレミアリーグの“一強”時代へと突入していた頃である。

 レアル・マドリードはスペインと世界の有望な若手を獲得し、彼らを育てながら世界一の座を維持し続けるという戦略に打って出た。マルコ・アセンシオ、ヘスス、バジェホ、ダニ・セバージョス、フェデリコ・バルベルデ、エデル・ミリトン、アルバロ・オドリオソラ、ヴィニシウス、ロドリゴ、アンドリー・ルニン、ルカ・ヨヴィッチ、そして日本代表MF久保建英、ヘイニエウ……。確かに10代から20代前半の選手に対し、投資をしてきた。

 ウーデゴールは、オランダリーグで実績を積み、そしてレアル・ソシエダでも結果を残して、2020-21シーズンにレアルへ帰還。しかし開幕からなかなか噛み合わず、今年に入りアーセナルFCへレンタル移籍していた。

 そして今季、カルロ・アンチェロッティ新監督のもと、再びレアル・マドリードにレンタルバック。デビューイヤーを含めると“三度目の正直”で活躍が期待されたが、プレシーズンからチャンスを得られず。そして今回、22歳のノルウェー代表アタッカーは、相思相愛の関係にあったアーセナルへの完全移籍を決断した。

  同メディアは2017年のペレス会長のコメントを引用する。

「現代のスポーツプロジェクトは、別の方法でアプローチしなければなりません。これまでは偉大な世界のプレーヤー(ビッグネーム)、スペイン人選手、そしてユースアカデミーによるものでした。今後は世界中の若い選手にも注目しながら、完成させていきます。私たちは、将来を保証する素晴らしいプロジェクトを構築していきます」

 後々に完成した選手へ高額な移籍金を払う“ギャンブル”に嫌気がさしていたと言えた。時間をかけながら戦力にし、状況に応じて移籍によって資金も得るというプランである。ただし、結果として、10代だったヴィニシウスやロドリゴに、いずれも移籍金4500万ユーロ(約58億円)を投じてきたと言われるが、その分の実を得るのも、それを回収するのはもはや至難となってきている。逆に主力を追い抜く選手が現れず、チームの弱体化が起きてしまっていると嘆く。

 もちろん、見方によっては、それでもウーデゴールをはじめ多くの選手は、レアル・マドリードでプレーするチャンスがしっかり与えられてきたとも言えるのだ。ただ、「白い巨人」のベンチを温める日々が続くのであれば、「セカンドクラス」のチームであってもより必要とされてコンスタントに活躍できれば、チームとともに進化できる一流のタレントたちでもある。

 同メディアは今年6月にペレス会長は「最高の選手がここでプレーするというポリシーは変わりません。最高の人材と若い人材の組み合わせ、成功をもたらすのが私の仕事。そして今年はパンデミックの影響を受け、リニューアルをしていく時期にあります」というコメントも紹介している。

 とはいえ結局、同メディアは、パリ・サンジェルマンのキリアン・ムバッペの獲得が実現すれば、そういったプランも、一気に誰の記憶からも吹き去るのではないか……とも懸念している。

 違約金がかからずに獲得できた久保は、今季が5年契約の3年目。久保を評価していたジネディーヌ・ジダン前監督の退任により、状況も変わってきた。ただ東京オリンピックでの活躍、そして(これからを含め)マジョルカでのプレーぶりも、アンチェロッティ監督にチェックされるだろう。

 何よりまず久保自身は、この2年ぶりにレンタルで戻ったマジョルカでの戦いに集中する。まずは1部残留へ。その先、やはりあのレアル・マドリードの白いユニフォームを着てチャレンジする姿を、見せてもらいたいところだが――。

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[文:サカノワ編集グループ]

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